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仕草風見録
【痴漢/痴女 官能小説】

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仕草風見録-3

『まもなく狐狸木駅。狐狸木駅です』
 気付いてみれば、私は単に肉棒を対象の陰部に擦りつけているだけで、彼女もそれに気付いてやや安堵する。
「はぁ、はぁ。やっ、き、気持ち良いよぉ……だめ、イ、イっちゃうッ!」
 到着を寸前に、私と対象は絶頂に上り詰める。
 肉棒から吐き出される白濁の液が、対象の潮と交じり合ってスカートの内側を汚す。
 対象は軽い痙攣を起こして、ガクッと膝を折った。電車の中で、友人達が対象の座り込んでいる姿を見たのは、停車した電車から人が降りて疎らになった頃だ。
「ど、どうしたの? 何かあった?」
 友人の一人が安否を確認する。
 対象は我に返り、この状況をどう取り繕うかを思案する。周りを見渡しても、私の姿はそこには無い。正直に痴漢にあったことを話すのは、対象も恥ずかしいようで困惑している。
「停まる拍子に、こけちゃっただけ……だよ」
 だが、冷静になってみれば分かるだろう。
「あれ? スカートが濡れてるじゃない」
 友人が対象の濡れたスカートに気付く。対象はそれを隠すように鞄を膝に乗せるが、その違和感に小首を傾げた。
 確かにスカートは濡れているのに、濡らしているものの正体は対象が思っていたものとは違う。精液や潮のようなものではなく、もっと粘度の柔らかい液体だ。それは、水素と酸素の原子が二対一で結合した時に出来る分子の集合体――無味無臭の液体。安直に言えば、水である。
「? ……え、えっと、誰かに掛けられちゃったみたい。あはは、今日は災難だなぁ」
 そう言って、対象は必死に誤魔化そうとする。作り笑いで出来た頬の笑窪を、人差し指で掻きながら。
 その後の、観察対象が友人達に気付かれぬようにして浮かべた表情は、それこそ「狐につままれた」と言わんばかりであった。
 もちろん、私はそれを油揚げなんぞ肴にして眺めていたりする。
 まったくもって、人間とは面白い生き物だ。


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