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仕草風見録
【痴漢/痴女 官能小説】

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仕草風見録-1

 仕草。何かをする時の微かな動作。
 千円札が無人券売機に入らず、困った時に思わず頭を掻いたりする。小銭のコインを指で弾いてキャッチする。大まかにそういうものを指す。
 ただ一言に仕草と言っても、それは多岐に渡る。
 今、私がやっているように、人差し指と親指で三角形を作るのも、仕草の一つである。
 これは俗に『狐窓(きつねまど)』と呼ばれる仕草なのだが、一つの名前の仕草でも形は様々だ。
 前屈姿勢でまたの両足の間から覗き込む形もあれば、指の組み方を変えたやり方もある。主に『狐窓』は、霊を見たりまやかしを見破る時に使われる魔よけの仕草なのだが、地方によって呼び方も変われば形も変わるといった具合に数多くある。また、人が変われば私の認識しきれぬほどはあろうか。
 ところで、何故私が『狐窓』をしているのかと言えば、別に幽霊を見たいとか狐に化かされているわけではなく。ただ、後学のために観察対象を確認していたに過ぎない。
 『狐窓』で視点を絞ることによって、周囲の余計な風景を排除して観察対象を確認する。仕草というよりも、単なる私の癖や習慣のようなものだ。
 さて、今回の観察対象は駅のホームを歩く彼女である。
 朝方の通勤ラッシュに混み合うホームで、数人の友人と談笑するロングヘアーの少女。落ち着いた物腰に清楚な振る舞い、時として見せる頬の笑窪に人差し指を当てる仕草が私の琴線に触れる。
 歳の頃は十六、七。五つほど離れた駅から近い、女子高の制服を着ている。名前までは知らないが、通りがかりに見つけたところでフッと目に付いたのだ。
 ホームに電車がやってきた。
 私は彼女の後ろにさり気無くくっつき、何気ない動作で電車に乗り込んでゆく。混み合う電車の中で、不特定多数の人間が鮨詰めにされていた。かく言う私も、その一人なのだが。
「うわぁ。今日も人が多いね……」
 観察対象の少女が、辟易したように呟く。
 誰というわけでもなく、呟きを聞いた友人達が苦笑を浮かべた。
 その間に、電車が動き出す。
 さて頃合だな、と私は心の中で独白してから観察に取り掛かる。もちろん、観察とて単に見ているだけではない。
 こちらから能動的に条件を与えた上で、対象がどのような仕草を取るのかを観察することもする。手始めに、私は軽く対象の肩に自分の肩をぶつけてみる。
「……ッ」
 それほど強くぶつけたつもりは無かったが、対象は私に見えないように顔を顰めた。しかし、混み合って揺れる電車の中だからと諦めた様子だ。
 続いて、手をポケットにしまったままそっと対象の背中に宛がう。
 対象は人混みの中で精一杯前に出て、私の手から逃れようとする。ならばと、手堅く手提げ鞄でガードされた臀部へと手を滑らせた。
「ッ!」
 鞄の向こうから臀部を押される感触に、対象は憮然とした態度で振り向き様にこちらを睨み付ける。
 私は、何気ない様子でつり革に掴まったまま外の情景を眺めていた。
 対象が視線を外したところで、再びアプローチを開始する。
 今度は大胆にも、鞄でガードされていない胸部へとポケットから出した手を運んだ。
「ヒッ……」
 大きくも小さくも無い双丘に手が触れたことで、対象が小さく声を漏らす。しばし逡巡してから、どうにか振り解こうと肩を揺すってみる。
 それでも離れないと見るや、鞄から片手を離して胸を隠すようにした。もちろん、その隙を逃す私ではない。
 ガードが離れた鞄の隙間にもう片方の手を滑り込ませると、濃緑と紺のチェック柄をしたプリーツの上から柔らかい臀部を撫でる。緩急をつけてみたり、ちょっと押し込むように力を入れてみたりする。サワサワとした布の手触り下で、マシュマロのような弾力が手を押し返してきた。


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