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キズ
【純愛 恋愛小説】

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キズD-1

県立藤空高校 3年2組 高見 有栖(たかみ アリス)

話は二年前に遡る私が入学してまだ間もないとき。他人にとっては、些細でありふれた事かもしれない。それでも、私はあの時の村尾君の行動には、とても感謝している。
私がまだ高校に馴染む事が出来ずにいた頃の話。
今でこそ、色んな男子に告白されたりナンパされたりするが入学して最初の頃は、センスを感じない黒いフレームの眼鏡をしていて髪も目の半分が隠れるぐらあって目立たない存在だった。友達も優ちゃんと数えるぐらいしかいなかった。そんな時に、放課後の図書館で私は本を探していた。


(何を借りようかな?う〜ん………何にしようかな。迷うよ〜)
私の高校の蔵書は意外と多く悩んでしまう。そうして私は、本を探していると一つの机に座る人物を見付けた。
(ん?彼は………確か村尾くんだっけ?)
夕日に染まった図書館にいたのは村尾くんといった男子だった。これが私と彼を最初に見た時である。彼は今と同じ様な髪形をしていた。
(へぇ〜、彼本読むんだ)
なんて思いながら、私は本を探しに戻ろうとすると何かに躓いてしまった。
「キャ!!」
そのまま転けてしまった。咄嗟に、手をつこうとしようとしたが逆に本棚を倒してしまいズドンとお腹に響く音を鳴らして本棚が倒れてしまった。痛みはこれといって無かったが恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じていた。
(良かった、誰も知り合いがいなくて。恥ずかしいよ〜これどうしよう)
倒れてしまった本棚を見ながらそんなことを考えていると後ろから肩を叩かれた。
「ひゃ!!何?」
後ろを見るとさっき見た村尾くんがいた。
「大丈夫ですか?何か手伝える事はありますか?」
「えっ……?……うん、あるよ出来ればこの本棚を起こしてくれるかな?」
「わかりました」
「ありがとう」
顔を赤くして御礼を言って余計恥ずかしかった。
「まあ、良かったです。先生も今はいなかったみたいですしね」
「そうだね」
本棚を無事に起こす事が出来た。
「ありがとう」
「いえ、大丈夫ですよ。それじゃ」
と言って彼は席に戻って言った。
そんな短いやり取りの中で私は彼の人柄に触れることが出来た。その時私は、さっきの羞恥とは違う物によって顔を赤くしていた。

これが私が村尾くんを気にしてしまう理由である。この出来事以降から私は、ファッションに気を使うようになったし優ちゃんにアドバイスして貰ったりして今の私になりこうして私は遅めの高校デビューを果たしたのだ。

「アリスちゃん?大丈夫?」

そんな声によって私は現実に帰ってきた。
「はい!!大丈夫です。ちょっと考え事してました」
「そう」
今は、校門で私を待っていた眞遊(マユ)さんと帰っていた所だった。
「眞遊さん」
「ん〜、何?」
「今度の土・日曜日のどちらかに遊園地に行きません?三人で」
「遊園地か良いね。詩音はどうかな、来るかな?まあ、無理にでも連れてくるか」
「あまり強引には連れて来ないでも良いですよ?無理でしたら良いですし」
「それでも、詩音がいた方が良いんだろ?」
「え〜っと、まあそうですね」
私は顔を赤くしながら言うと。
「可愛い!!アリスちゃんサイコー!!分かったお姉さんが必ず詩音を連れてくるから!!」
「え…ええ、お願いします」
眞遊さんの何かスイッチが入ってしまったらしくテンションが高くなっていた。


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