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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?6〜危機感認識の避妊知識・その1〜-10

「あるに決まってんだろ、女の方の意志でできる避妊法くらい」
これだけ言うと、哲也の方に視線を移した。哲也は一人無関係を装って食事に集中していたが、運悪く目が合ってしまった。流石にこれで知らぬ顔などできるはずがない。彼は観念した様子で健介に顔を向ける。
「哲也、ピルって聞いた事あるか」
すると出し抜けに問いかけられた。想定していなかったのだろうか、哲也の口から「あ、えっと」という狼狽が漏れ出る。
しかし数秒。すぐに立ち直り、即座に「いや、わかんないっす」と返事を返してきた。それに対し、健介は頬杖をつきながら再び溜め息をつく。
「だよなぁ。学校で習ってたとしても大低忘れてるもんな」
「ま、まぁ、これから健介が教えてくれるんだよな?」
しばらく間が空きそうだったので、誠司が話を促すような台詞で会話に入る。そのおかげか、健介が再び漏らしそうになっていた溜め息を飲み込む。代わりに、機嫌良さそうな笑みを浮かべた。
「ああ、そうだな。じゃあ、さっき言ったピルについて教えてやるから、しっかり聞いとけよ」
そして、ちょうどよく運ばれてきた追加のジョッキに口をつける。中身をそのまま一気に、半分程度飲む。その後、軽く口を拭ってから口を開いた。
「え〜と、ピルってのは、要は女が自分でできる避妊手段の一つ、ってとこだな」
「具体的にはどんなものなんすか?」
「飲み薬みたいなもんだな。避妊についてはかなりの効果が期待できるんだってよ」
「ふぅん……」
健介の言った事に感心するふりをする誠司。彼からすれば交際相手が使っている物なのだ。避妊率の高さについては既に理解している。
「ま、毎晩飲まなきゃ意味ねぇんだけどな」
ところが、続いた彼の補足に何故か引っ掛かりのようなものを感じた。
毎日飲まなければいけないというのは一応知っている。ただ、いつ飲まなければいけないかについては聞いた覚えがない。改めて聞こうと思った事はなかったし、玲もその事については触れなかった。
その一方で、忘れずに服用しているかどうかを情事の度に気にする所もあり、愛し合う前は必ず確認するのがお決まりだった。それだけ確かめておけば大丈夫、と思っていたのかもしれない。

しかし。

(……なんか、それじゃだめな気がする)
健介が力説するせいだろうか。
それで済ませていた自分に対し、誠司は漠然とした疑問を抱いた。
考えてみれば、性交で子を宿すのは女性である玲の方。それは、間違いが起こった際に多くの精神的な負担を彼女に強いる事をも意味している。更に、玲はKIRISAWAカンパニー社長。玲が身篭ったとなれば会社運営に影響が及び、彼女に別の苦悩を上乗せする。そして、その影響を受ける社員の側に立つ誠司では金銭的負担を肩代わりするのも難しく、玲に任せざるを得ない。
結論を言えば、生半可な知識で避妊に失敗すると、玲ばかりが割を食う羽目に陥るのだ。
考えを巡らせ、その事にようやく気付いた誠司は。
(……)
一瞬の空白。

(それってまずくないか!?)

全身に冷たいものが流し込まれる感覚。
事の重大性を理解し、健介と哲也の存在すら忘れて跳ね上がった。太股がテーブルに当たり、がたんと音を立てる。


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