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蒼い殺意
【純文学 その他小説】

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蒼い殺意-8

「顔全体に火傷を負った中年男の話なんだ。以後、妻はその夫とのsex を拒み続けるんだ。火傷を負ってからの、夫の自信喪失が妻には大きくのしかかったようだ。『愛の証し』として強要する夫に、妻は拒否反応を起こすんだょ。

そのことが夫にはわからない。不具者故だと思いこむ。そこで、仮面をかぶることによりその烙印から逃れようとする。『他人の顔』になるわけだ。手術後、ぐるぐる巻きの包帯顔で登場だ。

誰も自分を知らないんだ。昔の自分では無いとなるとだ、まるで自由なんだょ。全ての物から解放されるわけだ。囚われる必要が無い。素晴らしいよ、自分自身の心まで欺けるんだから。しかし、しかしだ、問題がある。自己の確認だ。誰も彼のことを知らないわけだ。

当たり前だ、突然現れたわけだから。本当の彼の過去は、今の『他人の顔』の彼の過去じゃないんだ。その内、彼自身が何者なのか分からなくなってしまう。勿論名前もあるし、本質的には変わってはいない。だけど、その証明ができない。人間の証明は、結局『顔』だからね。

有り余る自由を手に入れたが為に、自己の確認を失ってしまったわけだ。人間、所詮他人あってのものか?」


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