「彼女の艶母」-5
「高志くん、どっか具合でも悪いの?」
「うん、ちょっと頭が痛くて……」
早退することを告げると、千夏が心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「そういえば、あんまり顔色が良くないみたい」
「はあ……風邪かな?」
なんて嘘をつきながら、わざと辛そうに溜息をついてみる。
顔色がすぐれないのは、寝不足とオナニーのやりすぎのせいだろう。
「帰ってしっかり休んだほうがいいかもね」
「うん、ありがとう。そうするよ」
「あ、そうだ! 昨日さ、ブログに書いた記事を編集してたらね、なんか変な文字がいっぱい出てきたの。どうしたらいいんだろ?」
「ああっ、それは……」
言いかけて、僕は咄嗟に答えを飲んだ。
これは使える!
瞬時に頭が回転してくれた。
「それはね、たぶんタグが変な感じでバラけちゃったんだよ」
「うーん、よく分かんない……っで、どうしればいいの?」
「言葉で言っても分かんないだろうから……もしよかったらさ、帰りに千夏んちに寄って、僕が直しとこうか?」
我ながら上手い機転だった。
いまどきのレンタルブログに、タグも何もあったもんじゃない。
初心者でも簡単に出来るよう、最初からなんでも良心的に設置されている。
「ええ〜、体調悪いのに、いいよ、そこまでしてくれなくても。体調が良くなったらでいいから、今度見てくれる?」
「い、いやいや、こういうのは早めに直しとかないと、後からやっかいになるからさ。千夏、今から僕が行くってことをお母さんに電話しといてよ」
半ば強引に千夏を説き伏せ、僕はさっそく先生に早退願いを出してから学校を後にした。
心が浮き足立った。
心臓が、早くも高鳴っている。
家にお母さんと二人っきり……もしかすると、いや、万が一くらいの確率かもしれないけど、それでも何か起きる可能性はゼロではない。
僕は、千夏んちに行くまでの間、少ない可能性をどうやったら活かせるのか、それをムラムラしながら必死で考えた。
(ああ……結局、何もいいアイデアが浮かばないまま着いちゃったよ)
千夏の家に着き、玄関の前で最後の最後まで必死に頭をひねって考えてみるが、秘策は何も浮かんでこない。
もう、なるようになれだ!
淡い期待が消沈しつつも、ドキドキ感だけはさらに大きくなっている。
まあ、しかし、家の中に二人だけで居たという事実を作るだけでも、僕には最高のオカズになるような気がした。