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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(後編)-42

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「えー本日は、あーお日柄も、おー…」

「青嵐…センスなさ過ぎ」

結婚式のスピーチを任されたことで緊張しきりの青嵐に、カジマヤが容赦なく突っ込んだ。

「んなこといったってよ、結婚式のスピーチなんか初めてでよ…」

「何でいつもみたいに適当にやらないんだよ?青嵐は計算ずくで何かをするより、てきとーにやるほうが性に合ってるじゃん」

青嵐は反論のために開きかけた口をとじ、諦めて再び原稿とのにらめっこに戻った。

「う?いでででで!」

「カジマヤ、静かにしないか!」

隣に座るウミカジが叱った。

「だってよぉ…!」

後ろの席の赤ん坊が、カジマヤの髪の毛を掴んだのだ。その様子に、アリスも堪えきれず笑い声を上げた。

「こら、いい子にしてなさい!」

膝の上に幼子を抱いた茜はすっかり母親の顔だ。玩具を取られた赤ん坊は、その代わりに隣に座る父親の耳に眼を向けた。風炎が、金色の耳をぴょこぴょこ動かすのを見るのが最近のお気に入りなのだ。

「ほーら、パパのお耳ぴくぴく〜」

風炎が何食わぬ顔で、耳をひくひく動かすと、赤ん坊のかわいらしい笑い声が響いた。

その様子に、神立は思わず微笑んだ。澱みにいた頃は氷のように冷たい男だったのに、今では自分の耳で子供を笑わすことが生きがいになっているようだ。さっきまで神立の右隣に居た春雲は、赤ん坊の姿をもっとよく見るために神立と席を交換した。あかんぼうの一挙一動に、うっとりとしたため息を漏らす彼女を見ると、神立はなぜか嬉くなって、一緒になって赤ん坊の笑い声を聞いていた。

イナサは、穏やかな表情でその様子を見ていた。彼女のお腹は目立ってきて、時折動きを感じたりすると、すかさず隣の大和がお腹に手を当てている。



そんなほのぼのとした雰囲気と扉一枚隔てた向こう側では、さくらが緊張のあまり

「うーえ…」

吐きそうになっていた。

「何を緊張することがあるんじゃ…」

落ちつかなげに動き回る孫娘を、利三郎は半分あきれて見ていた。

「だってぇ〜…沢山招待したから人が一杯居るし、バージンロードは長いし…」

式の開始時刻まで後何分あるんだろう。さくらは出来るだけ短いといいなと思ってから、やっぱりもうちょっと長いほうがいいかも、と思いなおした。あまりに動き回るせいでずれたヴェールを、係員が手直ししているときに、優しい声で告げられた。


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