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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(後編)-43

「はい、扉が開きますよ」





招待客は息を呑んだ。勇ましい戦装束の少女を想像していたり、制服姿だったり、飾り気のない普段着の彼女を知っているもの―つまりそこにいた全員―が、真っ白なウェディングドレスに身を包んだ美しい彼女に、目を細めて拍手を送った。つつましく俯いて、バージンロードをゆっくりと、一歩一歩を噛み締めるように歩く彼女は、内側から輝いているようにも見える。

何より、彼女は幸せそうだった。

バージンロードの向こうには、淡い色のステンドグラスから差込む日の光に包まれた、彼女の愛する夫がいる。ヴェールの下で頬を染めた彼女を、祖父は優しく送り出し、夫の手にゆだねた。





「汝、その健やかなるときも、病めるときも

喜びのときも、悲しみのときも

富めるときも、貧しいときも

これを愛し、これを敬い

これを慰め、これを助け

その命ある限り、真心を尽くすことを

誓いますか?」



さくらは微笑んだ。ずっと夢に見ていたこの瞬間、幸せすぎて、彼女の胸ははちきれてしまいそうだった。優しい瞳で彼女を見つめる飃が、一秒ごとに、一秒前よりも彼女を深く愛するのを彼女は知っていた。出会ったときから、今までずっと。

さくらは、出会った日に誓った、彼と共に生きる未来をもう一度約束した。

「誓います」



「誓う」

飃は言った。目の前の優しく手を広げるような耶蘇の十字架に対してではなく、彼は自分自身と、そして誰よりも彼の傍らに立つさくらに対して。

彼女は今、広いこの世界の中で、彼だけを見つめ、彼のことだけを思っている。

長い戦いの間に自分が諦めたものすべてを彼女が与えてくれるのと同じ様に、彼女が得ることの出来なかったものすべてを与えてやろうと思った。

そのために誓いが必要だというのなら、何度でも誓おうと思った。命のある限り。毎日でも。



「それでは、誓いの口付けを―」

ちょこんとしゃがんださくらのヴェールを、飃は優しく持ち上げた。すこし恥ずかしそうな微笑を、もっと大きなものに変えてやりたくて、飃は彼女を抱き上げた。

「わぁっ!」

さくらは緊張を解いて朗らかに笑う。彼は其のまま、妻を抱きしめて深く口付けた。


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