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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(後編)-13

「親父」

――なんだ?

「お袋のこと…愛してたのかよ」

最後に聞くのには、あまりに他愛ない質問だったかもしれない。しかし父が微笑んだのを、青嵐は頭の中で感じた。

――ああ。お前と同じくらいに。

そして、組み合わさっていた文字は徐々に解け、意味を成さない線と点の群れに変わる。そして、そのすべてが薄れるとようやく彼の前に視界が開けた。

目の前には澱みの塵がまだもうもうとわだかまっている。

「青嵐―!」

自分を呼ぶ声が、遠くから聞こえる。温かい風が吹いて、澱みの塵を遠くへ運んで消えていった。

「親父…有難う…」

大きな父の手が頬に触れたような、温かい感覚を最後に、彼の身体の呪い文字も、父の声も、全てが消えていってしまった。

「南風…」

立ち上がった青嵐を、目に涙をためて駆けてくる南風が見つけた。

―ああ、何だよ南風、ぼろぼろじゃねえか…髪も切っちまったんだな…。俺がやった羽織もびりびりに破けてら…。顔には煤だか血だか…とにかく、よごれてるしよ…目なんか涙でぐちゃぐちゃだ…。

「青嵐!!」

「…綺麗だなァ、南風」

胸に飛び込んで泣きじゃくる妻の頭を撫でて、青嵐はぼんやりと言った。

「何をいってるのですか!もう!」

へへへ…と、青嵐は笑った。

「もう!」

南風はもう一度、怒って青嵐の胸を叩き、それから涙を拭いて気持ちを入れ替えた。

「ぼんやりしていないで、早く皆に指示を与えてください!」

そして、彼女らしい、優しさと強さが混ざり合った笑顔で微笑んだ。

「皆、貴方を待っていたのですよ」

南風の後からたどり着いた秋声が、ハチマキを差し出した。青嵐はそれを再び額に捲いて、自分の頬をぴしゃりと叩くと、南風の後に続いてやって来た狗族たちに大声でこう告げた。

「ここまでは、大策士であるこの俺の作戦通りだ!今からこの道を、飃と八条さくらがやってくる!!命に代えても護り抜け!」

その一言で戦士たちの闘志は燃え上がった。油にマッチを投げ入れた時のように歓声が広がり、その声は天まで届こうかというほどであった。



その時、空を稲妻が走った。戦士たちは、それが合図と示し合わせていたかのように怒涛の進軍を始めた。


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