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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(後編)-12

「すげぇ…」

「貴方は…一体…」

イナサは、その光景を満足そうに見つめる背の高い男に聞いた。男は、イナサに気づくと言った。

「青嵐会所属、飆だ。よろしくな」

「これだけの結界を一人で…」

イナサが感嘆して言った。

「まあな、前準備におっそろしく時間が掛かるうえに、あんまり耐久性のある代物じゃないんだが…時間稼ぎには十分だろう」

で、あんたは?と飆が聞くと、イナサは非礼をわびてから名乗った。

「震軍所属、イナサと申します。こっちは同じく震軍の大和」

「へぇ、じゃあ飃の知り合いか?」

その言葉に、イナサは肩を落とした。

「ええ…同郷の間柄です…しかし…二人は…」

「ああ、そういう話になってることは知ってるよ」

含みのある言い方に、イナサは俯いた顔を上げた。大和が警戒を滲ませた声で聞いた。

「どうしてそれを…?」

この事を知っているのは、進軍の一部の狗族だけのはずだ。すると飆は、余裕のある笑みを二人に向けた。

「予想はつくさ…。我らが青嵐会の大将は、2、3手先位までなら考えておく男だからな」





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―まったく、お前は本当に世話の焼ける奴だ。

「遺伝だよ、しょうがねえだろ」

朦朧とする意識の中で、青嵐はそれでも憎まれ口を叩いた。何故自分はまだこんなことを考えられるのか、不思議に思ったのは一瞬後だった。

自分が目を閉じていた事に気付き、恐る恐る開けてみる。すると、見覚えのある文字が、自分の目の前に浮かんでいた。それは、自分の身体の中にあったはずの呪い文字…かつて九尾の手にかかって死んだ狗族たちと、彼の祖先の名前だった。それが、青嵐を取り巻くように浮かんでいる。そして、体中に受けたはずの傷も、ほとんど治りかけていた。

「親父…」

―惚れた女をせっかくものにしたのに、そう簡単に後家にしてやるな。馬鹿息子が。

青嵐は、頭の中に聞こえる父親の声が弱っていくのを感じた。あの呪い文字の壁の向こうがどうなっているのか…それすら分からない。

――さて…わしはそろそろ、母さんのところへ行くかな…

体の中にあった、慣れ親しんだ感覚が、ポツリ、ポツリと消えてゆく。


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