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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(後編)-11

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夜が深まるにつれて、澱みの姿を判別するのが難しくなってきた。

大和は、ヘッドライトで道を照らしながら、澱みを見つけてはどこへでも乗り入れて止めを刺していった。イナサの義眼の術は、暗闇でも関係なく働くので、方向を指示してもらってはアクセルを回す。

しかし、かなりの数を取り逃がしていることは確かだ。警察の包囲網に到達するにはまだ少し距離があるが、何しろ戦場は広い。限られた人数で、そこから逃げ出した澱み全てを追うのは不可能だった。逃げ出した澱みはおそらく人間の魂を吸い、個体数を増やすだろう。そうなってしまっては手に負えない。先回りしてなんとか澱みを狩って行かなくては…

「大和!」

イナサが前方を示す。なんと、警察の包囲網を潜り抜けてここまで人間が入ってきていたらしい。ヘッドライトをつけたままの車が、道路に止まっていた。ヘッドライトがこっちに向っているためよく見えないが、対向車線の路肩に停まったセダンのドアは開いていて、そこに二つの人影が見えた。

「おい!ここは危ないぞ!」

大和は交通規則などお構いなしに、反対車線に乗り込んで車に近づこうとした。

その時、隊列を組んだ50体あまりの澱みが後ろから近づいてくるのが目に入った。大和はその場でバイクをドリフトさせ、抜き身の刀を構えた。それでも、車の脇に立つ人影は動こうともしない。大和はイライラしてもう一度怒鳴った。

「危ないって言ってんだろ!さっさと…」

男は大和の前に進み出て、片ひざを付いて地面にしゃがむと、聞いたことも無い言葉で何かを詠唱し始めた。

「な…」

澱みはどんどん近づいてくる。はじめ50体だと思っていたものが、だんだんと数を増し、空を飛ぶ翼手持ちの澱みもあわせて200はくだらない。

「おい、おっさん…」

不安げに声をかける大和と、不思議そうに彼を見つめるイナサに、車の中から女が声をかけた。

「邪魔しないであげて。前準備に1週間もかかったから、ナーバスになってるのよ」

前準備って…聞き返そうとする大和の目の前に、もう最初の澱みが到達しようとしていた。覚悟を決めて刀を構えると同時に、しゃがんだ男の詠唱が終った。



瞬間、地上からものすごい勢いで光の壁が飛び出した。まるで、有明海の水門が閉まる光景を逆さに映したようだと、大和は思った。様々な象徴が刻まれた光の壁が、彼らが立っているところを中心に、左右に広がるように飛び出していく。


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