ガリガル3!!-6
「好きな人に可愛いって思ってもらいたくて自分磨きして悪い!?可愛くなりたいと思っちゃダメ!?」
「何だよ、興奮すんなよ!」
「何それ!あたし全否定する…わ…け」
アドレナリン分泌し過ぎて口が滑った。
…言っちゃった。
「かのんも可愛いって言って欲しいクチか?」
「うん」
「言われてるみてぇじゃん。男にも女にも。まだ満足じゃねぇの?」
「うん」
海があたしを押すのをやめた。勢いは徐々におさまっていく。
「何で?」
「好きな人に言われなきゃ意味無いから」
ドキンドキンと鼓動が早まっていく。
「一番言って欲しい人はたぶんそう思ってないから…」
「それって…」
海の言葉の続きがあたしには分かる。
「誰?」
やっぱり。
キィと軋んだ音をたててブランコは止まった。
あたしは深呼吸して海を見つめた。ずっと言いたかったこと、今、言ってしまおう。
「それはね、かぃ」
「かぁいぃーっ!」
突如聞こえた声であたしのそれはかき消されて、海の耳には届かなかった。
あたしたちは揃って声の方を見た。
そこにはあたしの学校の制服の子が立っていた。
名前は分からない。でも見たことあるから、たぶん同じ学年。
「おっサツキ」
海に『サツキ』と呼ばれた子はこちらに小走りに走って来て海の隣に並んだ。肩までのフワッとしたパーマがかかった可愛い女の子だ。
彼女は、怪訝そうにあたしを見てから海に笑顔で
「何やってるの?」
と聞いた。
「ん?ちょっと。サツキには内緒」
「えーっ、何でよぅ!ねぇ、海!この間のことなんだけどね」
あたしはいないもののように海と彼女は二人だけの話しを進めていく。
何だかあたしは急に居たたまれなくなって、ブランコの脇に置いておいたスクールバッグを掴んだ。
「かのん?」
「あ、あの!あたし、帰るね!あの、それじゃ!!」
極力明るく努めて、二人に背を向けた。
「どうして?帰んのか?」
「…バイバイ!!」
あたしは歩き出した。しばらく歩いてそっと二人の様子を伺うと、丁度海が彼女の髪を触っているところだった。
あぁ、そうか。
ドクンと鳴った心臓が痛くて、あたしは無我夢中で走った。
今朝の海の言葉が聞こえた気がした。