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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(中篇)-22

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風炎は、一人ビルの屋上に立って、黒く聳え立つ敵の本陣を見つめた。

戦いが始まって、もう4日になる。そして、茜が彼の元を去ってから、5日。その5日目も、もう暮れようという時刻だ



―そこに居るのか、茜。



いまや多くの戦士が、ゲリラ化して街のいたるところに潜んでいた。風炎もその内の一人だ。元々、真っ向から勝負を挑んで勝てる相手ではない。戦士たちの離散を計画に入れた上での計画を青嵐が立てたことを彼は理解していた。

しかし、“何かが起る”まで待つということが正しいのか。我々が“何かをする”という必要は本当にないのか。

息を詰めて成り行きを見守ることに、痺れを切らして飛び出してゆこうとするものも多い。そんなものたちをとめるのは、ウラニシに同行した風巻の役目だった。どうしても行くというのなら、俺を殺してからにしろ、とまで言われては、さすがに誰も出て行けない。

「若は、無駄なことはなさらないお人だ。信じろ」

彼のように頑なに、そして確信を持って信じることが出来たら気は楽なのだろうが…。風炎は思った。それは、アカネに対する自分の思いと同じだった。

―生きているのか。

一刻も早く、あの結界を解いて彼女を助け出したい。同時に、彼女がそれを望まないこともわかっていた。これは彼女の戦いなのだ。

そう、あの朝はっきりといわれたのだから。



「さよなら、愛してる」

その言葉に、浅い眠りにあった風炎は飛び起きた。彼女は目を丸くして、玄関口に立ったまま彼のことを見た。

「どこへ行くんだ」

「風炎…」

彼女は困ったように目を伏せた。風炎の心には、疑問と、諦めと、怒りが少しずつわきあがった。何故何の相談もなく?いつものことじゃないか。しかも一度言い出したら絶対に諦めない。それにしても何故?

彼は茜に詰め寄り、場合によっては力づくでも諦めさせようとドアノブに手をかけた。「あたし、あいつのところに行く」

「だめだ」

即座に言った風炎に、茜は言い返した。

「誰もあんたの許しは求めてないわよ!これはあたしの戦いなの!あたしが決着をつけなきゃ、終らないの!」

「いいや、行かせない」

風炎は彼女の格好を見下ろした。何も持ってはいない。朱塗りの鞘を腰から下げていなければ、近所のコンビニにでも行くところだと思っただろう。

―そんな格好で…そんな格好でどこに行くっていうんだ。


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