「ストロベリークリーム〜Chocolate〜」-1
ここはとある喫茶店--「A.S.」
まだ準備中の店内では…
「今日、僕の運命の人がぁ…
来る、来ない、来る、こな…」
可憐な…男の子が花びらを散らしていた
そこに長身赤毛の目つきの悪い男が入ってくる
「うわ、店の花でやるなよ」
「あ、竜…
……あれぇ?どっちだったっけ?」
「知らねぇよ。ったく、牛も殺さぬ顔で花むしり取りやがって」
「それを言うなら『虫も殺さぬ』だよ。竜は相変わらずだね」
愁が竜の赤毛を軽く引っ張り、すたすたと店の奥に入って行った。
「おいコラ!相変わらずって何だよ」
「るー来ないーくる…」
「お前もいつまでもむしってんじゃねぇよ」
竜が紺の持っていた花を取り上げる。
竜の睨みには全く動じることなく、紺は膨れっ面になる
「花占いだよぉー竜もするでしょ」
「はっ俺が占いなんてかっこわりーもんするわけねぇだろ」
---紺の瞳がキラリと光る
「…この前『月刊Berry』買ってた」
ぎくっ
「今月の特集は『どき☆ドキ星占いSP気になるあの人との相性がまるわかり!』」
「んなっ…」
「天秤座と乙女座のところ真っ剣に読んでたよね?
竜は天秤座だったっけぇ、乙女座は誰なのかなぁ…?」
「わー!!分かった分かった、花占いでもなんでも好きにしろって!」
竜は言葉を遮るように、紺の口元に花を手渡す
「好きにしまぁす」
「はー…愁も一癖ある奴だけど、お前も大概怖いよな」
「何がぁ?」
知らん顔をして花占いを再開する
竜はぶつぶつ文句を言いながら行ってしまった
…馬鹿だなぁ、竜。
ごまかしたって、背中に『幸せです』って書いてあるのに
『あのサービス』だってやんわりと断ってるくせに
全部あの子が来てからのこと
僕も愁も気付いてるのに
でも、愁はなにも言わない
だから僕もなんにも言わない