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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(前編)-11

「最後はせいぜい美しく散ってね」

風を感じる。斬馬刀が風を切る甲高い音が近づいて…

「何よ…あんた!!」

けたたましい音は、御祭の剣が発したものではない。

彼は目を開けた。斬馬刀を受けて目の前で軋る白刃には見覚えがあった。

「お前…」

すらりとした長身、さらりと流れる白い髪。そして、傷だらけの背中。

「美しさを語る割には、随分と下品な得物を使うのですね、澱みよ」



乾軍の大将が、さわやかな風を纏って、そこに立っていた。

「へぇ!自分の兵隊をほっぽって、こんなところで油を売るなんて、お馬鹿さん!それとも、さっさと全滅しちゃったのかしら!?」

彼女は、斬馬刀を払って間合いをあけた。

「御祭、あなたは奥方の元へ。兵士達を助けてあげてください。そして苦境を脱したら、出来るだけ早くに澱みに見つからない場所へ隠れるのです。見つかったら数で押されて負けてしまう」

自分はこの戦いの戦力にならないということは分かっていた。御祭とあの澱みとでは、力の差は歴然だ。しかし、彼の知る限り、あの狐狗族はあれと互角か、それ以上にやりあえる力を持っている。

「御免!」

そういい残して、御祭は足を引きずって苦戦を強いられているであろう巽軍の元へ去った。

「せっかくの助けを追い払うなんて、ますますお馬鹿さんね!」

「お馬鹿さんはどちらかしら…私は、勝てない勝負はしない女よ」

狐狗族の不敵な笑みに、澱みの笑顔は消えた。

「ふふっ、言うじゃない。あたしは冥。あんたは?」

彼女はほつれかけた前髪を後ろに撫でて、うしろで一本に結わえた長い髪を払った。

「南風―でも名前で呼ぶのはやめて」

「どうして?」

南風は細身の剣を風で洗って、澱みに突きつけた。

「私の夫が呼ぶ名前だもの。貴方に穢して欲しくはないわ」

「ははっ!面白いやつね!」

血みどろの斬馬刀が勢いよく振り上げられる。南風はそれをかわしたものの、正直予想以上に迅い事に驚かずにはいられなかった。澱みは武器を使う能力がない。だから、わざわざ狗族の子供をさらって武器の使い方を仕込んだりするのだ。しかし、青嵐会と八長の会議で明らかにされたこの“強化版”は、武器も使うし扱いにも長ける。力の面でも、知能の面でもそれまでの澱みとは格が違う。

一度、二度、剣をあわせ、三度目で南風の剣が力負けした。

「どうしたのぉ?口ほどにもないんじゃない?」

歯を食いしばる南風に、容赦なく重い斬撃が襲い掛かる。


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