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風よ、伝えて!
【純愛 恋愛小説】

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風よ、伝えて!-2

店に戻ると、主任に車の異常が気になると報告してみた。
「あのー、主任。車の調子がおかしいんで、見てもらっていいですか?エンジン音がうるさいんです。」
「あぁ、音だぁ。お前さんの運転ではうるさいわなぁ。あまりふかさずに、静かに出ればいいんだょ。」

「でも・・・。それにですね、ブレーキの効きも悪いんですよ。サイドブレーキも弱いですし。」
「いいから。そんなことは車だけに頼らずに、自分の自慢の腕でどうにかしろ。急ブレーキをかけなきゃいいことだし、サイドにしたってギアをローに入れておけば問題ない。」と、予想通り相手にしてもらえなかった。

「ケッ、何とまあ調子のいいことを。自分の腕でカバーしろだって。いつも『人間の勘とか腕だとか、そんなものに頼ってはいかん。おかしいと思ったらすぐに報告するように』なんて、いつも言ってるじゃないか。」

俺は、ブッキラボウに会計に伝票を渡した。
「又叱られたわネ。」
「フン、叱られたっていいさ。俺は悪くない。ところで、今日は土曜日か?」
「えぇそうよ。明日は、日曜日。」

「フーン、そうか。よし、明日は車を借りて、ドライブにでも行くか。」
三歳ほど年上の女性との会話は、珍しく苦にならない。どうにも、女性との会話が苦手な俺で、正直の所デートなるものを一度もしたことがない。硬派を自負している俺ではあるが、まるで興味が無いわけではない。否、むしろモンモンとすることが多いかもしれない。

「ねぇ、私も連れてってよ。そんな怪訝そうにしなくていいの。私だけじゃなく、もう一人いるの。今度入った娘よ。一人では恥ずかしいから三人でのデートをしたいんですって。この、色男がぁ!」



突然のことに、何と返事をしていいのかわからず、唯ドギマギして口ごもってしまった。それにしても、今日はどういう日だ。二度も三度もドギマギさせられるとは。
「じゃあ、明日10時に会社の駐車場ね。そうそう、車の事は私から頼んでおくから。じゃ、そういうことで、キマリ!」

一方的に取り仕切られて終わった。自分の行動を他人に仕切られるのは嫌なのだが、今回は妙に嬉しい。自分で決断できなくても、腹が立たない。というより、頭の中では明日の走るコースを色々と思いめぐらせていた。
というのも、新入りの娘は一週間ほど前に入った夜学生である。結構かわいい娘で、少々気にはなっていた。しかし、例の如く話しかける勇気もなく、遠くから唯みているだけだった。

確か、16歳のはずだ。親元を離れての、集団就職だと聞いていた。初めの職場では、人間関係がうまくいかず、学校の斡旋でこの会社に入ってきたという。社長の娘であるこの事務員が、お姉さん代わりに何やかやと世話を焼いている。
その社長の娘に対して、俺はため口を利いている。他の者は、結構敬語を使っている。俺に忠告する人もいるが、反骨心がムラムラと湧いてくるのだ。


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