1・2・3-18
十五
ドドンッ!!
花火の音がお腹を振るわし、その振動が私の鼓動を早くした。
‘バカじゃねーの’翔ちゃんからその言葉を聞きたくない…
一回振られてるのにしつこい女だと思われてるだろう…
私、沈黙に耐えきれず口を開いた。
「…ごめんなさい…分かってるの、翔ち…北原君は涼子ちゃんとつき合ってるから…」
だから…
「は?ちょっと待て、俺は佐伯とつき合ってねーよ」
え?…
「なんだよその情報は!!」
だって…だって、翔ちゃん…
「…メールアドレス…涼子ちゃんの誕生日だって…」
「おまっ!!お前なー、自分の誕生日言ってみろ!!」
え?…私?…私の…誕生日…?
「…1月…2…3…日……」
え?………1・2・3…
「お前のメルアドは?」
私の?
「…ricoricorico.s105…」
「俺の誕生日言ってみろ!!」
翔ちゃんの?
「…10月…5日…」
あっ
でも、え?どういうこと?
私、おそるおそる顔をあげた。
翔ちゃん、門に寄り掛かり言った。
「それから、その呼び方やめろよ」
呼び方?
「いいっていったろ‘翔ちゃん’で」
え?だってあれは夢…
私、熱を出して保健室で寝てたときの夢を思い出した。
…夢…じゃ、なかっ…た…?
「つか、お前何で泣いてんだ?具合悪いんだろ」
翔ちゃん、私に歩み寄り言った。
「あ〜時田さんありがと」
翔ちゃん、サヤカちゃんの袖から私の手を離しながら言う。そして、次は市川君へ視線を向けた。
「市川…って言ったけ?…ごめんな俺、お前とリコがつき合ってるんだと思ってたんだ」
翔ちゃん私の手を握ったまま…
なんだろう…どうなってんの?
私、イマイチ状況を把握できないでいた。
「…私…」
頭がごちゃごちゃしてる。
「どうした?」
翔ちゃん、私の顔をのぞき込む。
「…翔ちゃんって…呼んでいいの…?」
「…いいよ」
「…翔ちゃんを…好きでいていい?」
「…いいよ」
「翔ちゃんは…翔ちゃんは私を…」
「好きだよ」
翔ちゃん…
「俺はずっとリコの事好きだった」
周りのみんなは夜空にあがる花火を見上げ、歓声をあげている。
その歓声を遠くに聞きながら翔ちゃんの手の暖かさを感じていた。