1・2・3-14
店を出ると松田君、慌てたように時計を見た。
「うわっっやべっ今日、俺バイトあったんだ。ごめん、先行くわ」
松田君、私たちに両手を合わせた。
「おう、じゃあな」
「バイバイ」
「またね」
松田君に手を振り、見送った。
松田君の姿が見えなくなると市川君、サヤカちゃんの買い物袋を指さして言った。
「気に入る浴衣あった?」
「え…あ〜うん、まぁ…」
サヤカちゃん、袋を振ってみせる。
「そか、あっ俺ちょっとCD見てきていい?」
市川君、CD店を指さして私たちの返事も聞かず行ってしまった。
「リコちゃん」
市川君の背中を見つめながらサヤカちゃんが言った。
「何?」
私、サヤカちゃんの顔をのぞき込む。
サヤカちゃん、私の方に向きなおり、一呼吸おいて言った。
「本当は好きな人いるんでしょ」
ドキッー
私の頭に翔ちゃんが浮かんだ。
違う、もうあきらめたから、違う…
頭の中の翔ちゃんを追い払った。
「いないよ」
そうだよ、もう好きじゃない。
「嘘、好きなんでしょ市川のこと」
え!?
「違う!!」
私、大きく首を振る。
「何で隠すの?私に内緒で二人で会ったり連絡とったりしてたんでしょ」
!!…何で知って…
「聞いたの、前にリコちゃんが風邪ひいたとき…」
あっ、聞こえてた…?
「今日だって本当に偶然?私、浴衣の話なんかしてないのに市川知ってた」
どうしよう…
「サヤカちゃん、違うよ本当に私…」
私、サヤカちゃんの腕を掴んだ。
「二人でコソコソするのがいやなの、何で私に隠すの!?」
サヤカちゃん、私の腕を振り切ると走り去った。