「緋色の欲望」-2
「…こ、困り…ます」
為すがままになっていた舞の口から辛うじて反論の言葉が出る。
前回、流されるままにあんな行為に及んだため、舞は酷い目に遭ったのだ。
また、楼主の怒りに触れるようなことは避けねばならない。
「何で?兄貴とはヤってたじゃん。昼間っからあそこの広場で。見せつけるみたいにさ」
…あの痴態を見られていた。
彼の発言に舞は青くなる。
「それともアレ?淫乱な赤ずきんちゃんは、誰かに見られてないと感じないわけ?兄貴とやったときは俺が見てるの知ってたの?ホントは俺に見せつけてたんじゃないの?」
耳元で囁かれ続ける粘着質な言葉に舞は震えた。
「やぁっ!」
聞きたくないあまりに耳を塞ぐ。
しかし、その手は容易に剥がされ再び囁きが始まる。
「そんなに見て貰いたいなら兄貴を呼んでこようか?兄貴も喜んで来ると思うぜ?何せ、アイツはウサギと同じで年中発情期なんだからな」
小馬鹿にしたような笑いが舞の耳を掠める。
「や…め、てっ…」
舞の瞳に涙が浮かぶ。
「兄貴を呼んで欲しくないなら後は自分で脱ぎな」
外された手は今度は舞の首筋を押さえつける。
「逃げようとしたり、無駄な動きをするようなら、このまま首絞めるから」
添えられた手に一瞬力がこもる。
舞は震える手で自分のブラウスに手をかけた。
普段、何気なくやっている行為なのに、こうして強要されると、それが妙に難しい。
舞は苦労しながらも、ようやく最後のボタンを外す。
袖を抜くと、そのまま下に落とすように指示された。
パサリ…。
軽やかな音を立てて白いブラウスも地面の一部となった。
「へぇっ。可愛いブラしてんじゃん」
今日の舞の下着は小花模様のあしらわれた上下セットのものだ。
レモンイエローが、舞の白肌に映えている。
「でもさ、俺としては下着よりも中身なわけ。早くしてくんない?」
再び首筋に力がこもったような気がして、舞は急いで背中に手を伸ばす。
彼の機嫌を損ねぬように、それでも羞恥心から何度も躊躇いながらホックを外し紐を下ろす。
ゴクリ。
露わになった舞の胸を前に彼の喉が鳴る音が聞こえた。
しかし、舞にはこれ以上、躊躇う時間は与えられていなかった。
次いで下腹部に手をやり下着を下ろす。
ついに、舞はローファーと靴下だけという奇妙でそれでいて卑猥な格好になってしまった。
無意識に大事なところを手で覆う。
ふっと、首筋が解放され彼が1歩離れた。
喉が酸素を求めて浅い呼吸を繰り返す。
落ちていた制服を拾い集めると先輩は隣の木の枝にまとめて吊す。