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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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mare-10

「聞いてたのか?!」

「聞こえちゃうんだよ、このでっけえ耳が見えないのか!?」

オレが人生で一番どぎまぎしてるのをよそに、野分は嬉し涙も流さんというほどの勢いだった。オレに抱きついたままぴょんぴょんはねるもんだから、眼鏡がずれてどうしようもない状況になっている。小夜はとっくに声をあげて泣いていて、相方はあたふたしながら必死に涙を止めようとしていた。

―悪くない。いや、全くもってわるくないぞ、この気分は。

やっとのことで野分を引き剥がすと、彼女は言った。

「心配しろ、あたしたちが命をかけてお前らを守ってやるからよ、ビレオレターなんか撮らなくたって大丈夫だぜ!」

“ビレオレターなんか”と大見得を切った野分の後ろで、小夜が涙を拭きながら

「でも、念のために撮って置いてくださいね」

といってるのが聞こえた。



++++++++++++++



時に波は、気まぐれに、最も安全と思われるような高台にたつ物をも襲う。津波のような勢いで。

その津波に背を向けて逃げるか、波に挑んで遠くへの旅に赴くかは、その者次第。



選ぶのは波ではない。



そのことがどういう展開を導くかは、波も、ひとも、運命さえもまだ知らない。


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