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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stormcloud-9

「春雲、君は―何者なんだ?」

彼女は一瞬はて、と考えて、言った。

「どこから話したものか…わらわの出自はややこしくて、説明するのは手間だ。これが終ったらおまえも、己の出自を話してくれるのだろうな?」

「その内に」

と、神立は少し余裕のある笑みを返した。

「さて…わらわの生みの母の名は、瑞香(リュイシャン)と言い、巣の東の端の方で衣をしつらえる貧しい針子だった。母は十三の歳に父上に見初められて、瑞香はわらわを身籠った。しかし、どう考えても卑しい針子が龍宮に入ることは出来ないので、瑞香は一人でわらわを生んだ。しかし、龍宮にはその時、王の血を継ぐ雌龍が一人もいなかった。宮のしきたりで、龍王は男と女の両方の子をもうけねばいけない。だからわらわが…なんじゃ?」

そこで、神立が“ちょっと待った”のジェスチャーをしていることに気付いた。

「ちょっと待って。じゃあつまり、君は…龍の王様の…」

「そう、娘だ。なんだと思っていたのだ?名に“雲”を配することが出来るのは王の血を継ぐ者だけだ」

冷や汗をかく神立を見て、春雲はくすくすと笑った。

「聞いてなかったとみえる。なに、案ずる必要は無い。わらわは妾の子ですら無いのだもの…皆わらわをどう扱ったものか困ってしまっているくらいだ。だからこんな離れをあてがわれ、王へのお目どおりも叶わない。しきたりと言うことで一応面倒を見てもらっているだけ…人形と同じだ」

そう言って、卓の上の小さな饅頭をほおばった。窓の外では、雲の群れに黄昏が忍び寄り、夏の日差しは翳っていた。

「お母さんは…どうしたの?」

「それはどちらの母のことだ?生みの親か、養いの親か?」

「生んでくれたお母さんのほうだよ」

春雲は足の長いイスの上で足を組み、物憂げな視線を眼下の町に送った。

「さあ…物心ついた頃には、死んでいた」

実にそっけない言い方だった。

「寂しく…ないの?」

彼女は首を振った。

「貧しい針子と、王の娘だ。生きていたところで、二度と顔を合わせることもない」

それは断乎とした言葉だった。

「わらわは王の娘だ。母を恋しがるより先に、やらねばならぬことがある」


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