Stormcloud-22
「あぁっ…!」
押し広げて入ってくる異物を、彼の本能が拒み、体が受け入れる。ベッドについた手足に力が入らない…一突きごとに情けなく身体を揺らす彼の腰を、冷たい手がしっかり捉えた。自らが達するまで、何回でも何分でも、そうして腰を打ち付ける。
「愛してるぜェ、七番…」
戯れに口にする台詞。嘘でしかないと知っていながら、耳元で囁かれるその言葉に体のどこかが悦んでいる。
「お前が殺し続ける限り…お前がオレの役に立つ限り、オレはお前の事が大好きだよ…」
彼の台詞を邪魔しないために、口の中に突っ込まれていた指が、引き抜かれて糸を引く。
「っ…いヤ、だ…!」
その指が、どこへ行くのか知っている。力加減を知らない指が、ギュッと掴んで、擦る。下半身が中の異物の形を写し取れるほどに締まる。
「ヤ、じゃねえんだよ感じてんだろォが!」
嘲る様な笑い声が、暗くうつろな子供部屋に響く。
―嫌だ。
尻を、背中を打たれる。シーツを掴む指にも、もう力が入らない。
「御免なさい、擾…っ」
―嫌だ嫌だ嫌だ。
痛い、体中が痛い。握られたものも、打たれた背中も、擦られる内壁も…そして、自分のつめが深くつきたてられた手のひらも。
「も、駄目…許して…!」
加速する腰の動き。嬌声がそれに合わせて震える。
―もうしないから。もう的を外したりしない。止めを刺し損ねたりしない。口答えしない。血を怖がったりしない。泣いたりしない。いい子にする…いい子にするから…
朦朧とする意識を許さぬ金気臭い匂いが鼻腔を突き刺した。生暖かい、嗅ぎ覚えのある匂い。そう、記憶と直接結びついてしまうほどに。
『いたい よう なな ばん。
おまえ に やられ た せなかの きずが。』
―御免なさい…許して…
蛇のように纏わり付く、沢山の今際の声。いや…今際の声であるはずが無い。彼らは既に死んでいるのだから。死んだ彼らが、蛇のように連なって、神立の身体を締め付ける。
いたい、いたいよと、泣きながら。
『おまえ に ころされた。 おまえ が ころした』
―好きでやったんじゃない…殺さなきゃ、僕が殺されていたんだ…
『いや ちがう いいや 違う!!』
蛇の頭が、耳の奥にぐいぐいと入り込んでくる。闇にからみとられた手足が例え動いても、頭の中に入り込んだ蛇の言葉を、塞ぐことなどできない。
『おまえは 楽しんでいたとも 神立。』
―違う、僕は…
やがて嘲笑が、肌を這いずり回る悪寒のように空気を埋め尽くす。
神立は息が出来なくて、ひたすらにもがく。暗闇の中、服も着ずに、声も出ず、耳も聞こえず…ただ、頭の中では…