「瓦解する砦」-8
「で、二人して俺を待たせたわけか。九木、お前随分と偉くなったなぁ」
執務室に楼主の声が響く。
「…出すぎた真似をいたしました」
対する九木はどこまでも低姿勢だ。
「で、舞にはぶち込んでみたのか?」
楼主の声に嘲りがこもる。
「いぇっ。“商品”に手を着けたりは…」
「だよなぁ。お前には“検品”もさせてるもんなぁ。明日からまた忙しくなりそうだなぁ」
楼主の声に嗜虐が混じる。
「承知しました」
九木が何かを承伏すると、九木に対する怒りは収まったらしい。
今度は、舞に矛先が向いてきた。
「舞、脱いでみせろ」
逆らえる理由は何もなく、舞は羽織っていた襦袢に手をかけた。
肩から布が滑り落ちると共に露わになる縄模様。
「ほぅ、随分綺麗に色づいたじゃないか」
縄目に沿って舞の躯を楼主の指が走る。
「んっ…」
指の動きに沿ってゾクゾクとした感覚が舞の躯を駆け巡る。
「こんなに綺麗なら、服なんていらないんじゃないか、舞?」
舞の瞳に怯えが走る。
「そのまま首輪を付けて、九木に街中の散歩に連れていって貰うってのはどうだ?なぁ」
舞に拒否権は、ない。
「じゃあ、早速行ってこい」
「い、今からですか?」
流石に舞の声が上擦った。
「何?舞は白昼を裸で歩きたいわけ?まるでどこかの王様だな」
楼主の声が神経質な笑いを立てる。
「舞さん、行きましょう」
九木の声が割って入る。
「九木ぃ、あんまり舞を甘やかすんじゃねぇぞ」
「承知しております。さ、舞さん。行きますよ」
九木は楼主から首輪とロープを受け取ると、その場でカチリと舞に装着する。
「では、行って参ります」
そのまま、九木に引かれるようにして舞は執務室を後にしたのだった。