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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-8

しかし…ひょっとしたら。

彼女をここに置き去りにしたら、帰り道がわからなくて死んでしまうかもしれない。いや、そう遠くないところに人間の村がある。そこまでいけば死ぬようなことはないだろう。

多分。

もしかしたら、彼女は彼が思うようなあめりかーではないのかもしれない。観光客の一人だという可能性もある。それに、世界にはあめりかーにそっくりな人間が暮らす沢山の国があるという。あの少女が、カジマヤの友人を殺した、鉄の鳥を飼うフェンスの巣の中に住んでいる人種であるという確証はどこにもないのでは?

そう考えながら…カジマヤは自分の家までの距離を半分進んでいた。三分の一の行程を過ぎると、もう彼女のことは考えないようにしようと思った。

今は、あんなのに構っている時間はないのだ。今夜はついに、長い間練りに練った計画を実行に移す日なのだから。



「カジマヤ、いたのか」

思わずびくっとしたり、おかしな声を上げないようにするには大変な努力を要した。かといって、不信なそぶりを見せることもしてはならない…今カジマヤの背後に立って彼を見下ろしているウミカジは、万が一にも侮ることなどあってはならない鋭い観察眼を持つ上、カジマヤが企んでいる計画を知られたら万が一にもそれを許してくれないことは明らかだから。

「いたのか、って…随分な言い方だなぁ」

年の離れた兄は、長い赤毛を後ろで三つ編みに結って垂らしている。いつも必要以上にきつく結うせいで、鋭い目つきは余計に鋭くみえるのだ。

「確かに…最近は都会遊びを控えているようだ。が…」

文の最後に逆説が来るのは悪い兆候だ。カジマヤは心の中で身構えた。最近、都会のかアリによくいくあの場所のことを、兄に知られていなければいいがと思った。ウミカジは、シーサーにしては随分背が高い。彼は高いところについている目でカジマヤをしばらく見下ろしてから言った。

「…まぁいい。お袋に心配をかけるなよ」

「島にいなくて心配させて、島にいても心配させるんじゃ、俺ってそうとう親不孝だな」

ウミカジは、弟の軽口にふっと目を細めて

「そうさ。お前は村一番の問題児だからな…だからお袋はお前が可愛くて仕方がないんだよ」

「うへーっ。なんだよヤッチー(兄貴)、気持ちわるっ」

「おれがお前のことを可愛いと言ったわけじゃない。問題児のウットゥ(弟)を持って本当に不幸だと思ってるさ」

兄弟同士の掛け合いは、何故かカジマヤを元気付けた。二人には共通するところなんて無い様に、傍から見たら思えるかもしれない。だが、お互いを見つめる目の中の悪戯っぽい輝きは、二人がまぎれもなく結びついた兄弟であることを物語っていた。

「ヤッチーもさ、お袋に孫の顔を見せてやれよ…」

常々思っていることほど、なかなか口に出しにくい。カジマヤは、こういうときに言おうとは思ってなかった言葉が、つい口をついて出るのを止められなかった。あわてて付け足す。


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