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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-7

いつしか夜風が彼の頬をなで、その頃には彼の顔は再び表情を失っていた。時々、思い出したように涙が頬を流れて、首筋を辿った後、服に吸い込まれて消えていった。

閉じても閉じても、うっすらと見開こうとする死んだ友人の目を、今は布で優しく覆って、夜の闇にすら隠せない死んだ森の姿を、隠してやった。

鎮魂の歌を歌うカジマヤの声は、今やかすれて、囁きに近くなっていた。それでも彼はやめなかった。カジマヤは死者の浄化を願う、一番優しい鎮魂歌を選んだ。憎しみを背負うのは、いつだって生き残っただれかだ。死者はただ、安らかに…生き残ったカジマヤには…

「ウリジンベ…お前は何も持っていかなくていいよ…悲しみも、憎しみもここへ置いていけ」

立ち上がったカジマヤの足は、少しだけふらついた。数羽の海鳥が、そんな二人の様子を見守るように梢に止まっていた。

「インガラサ(アジサシ)よう…こいつの妹のところに行って、届けてやってくれ…。」

そして、持っていた小刀で、ウリジンベの髪の毛の一房を切ると、アジサシの足に結んだ。ウリジンベに親はいない。小さな妹が一人、大人たちに囲まれて、今は兄の訃報を聞いているだろう。でも、彼女にこんな姿を見せてやることはできない。小さな白い鳥が正しい方向に飛んでいったのを見届けると、カジマヤは上着を脱ぎ、ウリジンベの亡骸にかけてやってから、島を出た。



さっき落としてやった機体はまだ、浅瀬に突き刺さっている。操縦士はいない…仲間に助け出されたのだろう。

―止めを刺しておくべきだっただろうか。

飃兄ちゃんならどうするだろう。と、カジマヤは思った。全く同じ状況で…もちろん、傍にさくらがいなかったら?去年の兄ちゃんだったら止めを刺していただろうな…でも、今は…

―その変化がいい事なのかはわからない。俺が判断することでもない。

月明かりが、彼の眼下に広がる真っ黒な海に道しるべのように輝いていた。いつもなら、地平線の向こうまでその道を辿ってゆこうという気にもなったけれど、今夜のカジマヤには別に行くところがあった。カジマヤは更なる風を起こして、スピードを上げた。星が漂着したようにも見える、海岸線の向こう…。



何もかもを、置き去りにしたかった。

彼は更にスピードを上げ、風さえも、彼を追いかけることは出来なかった。



++++++++++++++



カジマヤは、下着姿にしか見えない少女に自分の上着を放って(びしょ濡れではあったが)

「あー…早く帰れよな。」

そう言うと、きょろきょろと辺りを見回す少女を置き去ろうとした。意図的に。

あめりかーを助けたなんて、村の仲間に知られたら、彼の居場所は本当にこの島からなくなってしまう。何より、あめりかーは彼の親友を殺した奴の仲間だ。そのせいで見えない非難のまなざしを向けられるのは彼の家族なのだ。兄ならばまだ耐えられるかもしれないが、母にはそんな苦労をかけたくはなかった。


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