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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-3

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今となってはひどく遠く思える、あの日…全てのものが、まるで一枚で事足りる映画フィルムを何枚にもかさねて映し出した光景のように色濃く、揺らめく大気の中に浮かび上がっていた。本州ではまだ桜の残るところもあるというが、この島はとっくに夏に向かって歩き始めていた。

蝉の合唱はどこからとも鳴く聞こえ、まるでその音色に包まれているような錯覚を彼に与えている。

「おいおいおい…“遊び”をさぼってお勉強かよ?」

からかう声色。彼のまん前に笑顔で仁王立ちする陰を、カジマヤは見上げた。胡坐をかいた足の間には水で濡れてふやけた絵本が置いてある。

「…かくれんぼなんてさぁ、もうそんなことする歳じゃないだろ?」

そのページを注意深くめくりながら、カジマヤが答えた。

「でも、海の中からガラクタを拾い集めるくらいいは子供ってわけだ?」

「うるせー」

背が高い彼の、きついウェーブの短髪はカジマヤのそれより少し赤みが濃い。焼けた肌によく生える真っ白な牙が、彼の気の強さを表すように鋭かった。ウリジンベはカジマヤの隣に腰掛けて、すがすがしい海の蒼を眺めた。

「でも、俺らがチビ達の相手をしてやらなきゃ。だろ?」

大人びた口調のウリジンベが、カジマヤをチラッと見て言った。

「第一お前だって、あいつらくらいの頃は毎日年長にかじりついてねだってたじゃないか。“ねぇ〜、ミーラーマークー(泥合戦)やろうよぉ〜!”ってさ…」

「うるせーな!」

そう言ってウリジンベに掴みかかるカジマヤも笑っていた。

「お前も人のこといえないって…だからこうしておれの隣でサボってるんだろ?」

「お前よりは真面目にやってるよ…さっきまでは、だけど」

今頃、島中のシーサーの子供達が彼らを探して駆け回って居ることだろう。案外、彼らが昔、鬼役をせがんだ狗族たちもこうして、カジマヤたちの目を逃れてくつろいでいたのかもしれない。

そうしてしばらく、穏やかな時間の流れに身をおいていた二人のうち、ウリジンベが口を開いた。

「お前、最近よく東京に行ってるらしいな」

「ああ、うん」

「そんなに楽しいかよ。向こうは」

その口調には、非難めいたものが混ざっていた。かすかに眉根を寄せてカジマヤが立ち上がる。


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