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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-21

「気がつく少し前、彼が言ったんだ。“あんたがたのしたことで、尊い自然と、一つの命が奪われたことを、知ってください。”とね。そしてこうも言っていた…“だから、おれはその命のためにあんたを攻撃した。おれがあんたを憎んだまま放っておけば、あんたはやがて死ぬだろう。そして、アリスはおれを憎み、おれの仲間がアリスを憎むだろう”」

スティーブンは、娘の頬を流れ落ちた涙を、大きく丈夫な手で拭った。

「“だから、俺はあんたを救う。全身全霊をかけて。だから、いつかこの島に変化が訪れる時まで、このことを忘れないで居てください”と…」

自分の涙を拭う前に。

「お前は、彼のことを知っているんだね?」

彼女はうなずいた。父は、聞いた。

「彼は…誰なんだ?アリス…私には神のように思えた…でもそうじゃないんだね?」

アリスは頷いた。

「でも、あたしにはうまく説明できないと思う、パパ…だってあの人は…とても不思議な…風みたいなひとなの」

父は、娘の率直な言葉に微笑んだ。

「もし今度彼にあったら…伝えてくれないか…感謝と、謝罪の気持ちを…。」

娘はうなずいて、強くカジマヤのことを想った。強く。





何処までも蒼い海は、いっそう蒼さを増してゆく。夏が深まるごとに、一日ずつ。

どこを見ても青いのに、全ての青が違う色だった。一メートル進むごとに、全く違った世界が顔を見せる。日の暮れかける今の時間帯なら、なおさらだ。どうやったら、青と、赤と金があんなに美しく混ざり合うことが出来るのだろう。

ジェットスキーの速度は、彼の腕の中で感じた速度よりもずっと遅いけれど、アリスは気にしなかった。彼に近づいている、確信があった。

「…あれだ!」

無残に焼き払われた森。匂いをかげば、今でも焦げ臭い匂いがしてきそうだった。小さな浜辺にジェットスキーを引き上げて、島に降り立つ。生き物の死骸はなかった。生き物の気配とか、存在を感じさせるものは何一つ。身震いを抑えきれず、何度も手を握る。許しを請うように頭を垂れてゆっくりと進んだ。

真新しい花が、木の根元においてあった。カジマヤが供えたものだろうか。それとも、彼の家族が?アリスは跪(ひざまず)き自分のナップザックから花束を取り出して、横たえた。私の祈る神は貴方達とは別の神様だけれど、と一瞬思ったが、その考えは打ち消した。大事なのは聞き届ける神の種類ではない―祈るものの心のほうなのだ。

―どうか、こんなものを使わなくていい日が来ますように…こんなもののために、大事な命が失われる必要のない世界が訪れますように。

幽かな風が、アリスの後ろ髪を梳いた。カジマヤが、彼女の後ろに降り立った。

「…ウリジンベって言うんだ…俺の友達」

「…ありがとう」

祈りを終えるまで、彼女はそこを動かずに居た。そしてさらにもうしばらくの間そこでじっとしていた。

立ち上がって、振り向くのには実際勇気がいったけれど、彼女はそうした。父との約束を果たして…自分の気持ちを伝えるために。


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