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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-22

「アリス」

確かめるように、カジマヤが言う。

言いかけた言葉を遮って、アリスは頭を下げた。

「ごめんなさい!」

カジマヤの顔は見ていない。怖かった。どんな顔をして向き合えばいいのか、ずっと考えて出なかった答えだ。今この瞬間にも。

「そして、有難う」

「それは…俺が言われていい台詞じゃないよ」

少し、落ち着いたカジマヤの声が聞こえた。

「あ、あたし…」

父親との約束を果たし、今度は自分の気持ちを言うつもりだったのだが、言葉が出てこない。そもそも、自分の気持ちってなんだろう?俯いたままのアリスの手を、カジマヤがとった。

「行こう」

答える間もなく、アリスは風にさらわれた。



「あのさ」

目的地は、初めて言葉を交わしたあの崖だった。カジマヤにとってもアリスにとってもそこは、何と無く楽に話ができる場所であるような気がした。二人の頭上には、いつかの時のように、途方にくれてしまいそうなほどの星空が広がっていた。

「どの星を頼りに、ここまで流れ着いたのかって、言ったよな」

アリスはうなずいた。二人は今、多分別々の星を見ていた。

「もし…ウリジンベが星になったんだとしたら…おれたちはその星に案内されて、出合ったんじゃないかと思うんだ」

アリスはうなずいた。そして、どちらともなく、二人の間にあった人一人分の距離を埋めた。



何が始まるのかは、誰にも言うことはできない。しかし、何かが始まったということは確かだった。例えそれが、一人の少女と、一人の少年の間に生まれた小さな小さな変化だったとしても…それが、太陽の光にも、月の光にも叶わないような小さな星屑の光だったとしても。

いつかはそれが、別の旅人を照らす光になるかもしれない。

二人はそうして、いつまでも優しく手を握り合って、夜の世界のゆっくりとした移ろいに身を任せた。


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