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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-12

翌日、村の子供達と顔を合わせて決まりの悪い思いをする前に、カジマヤは家を出た。(どうやら、あの後眠り込んでしまった自分を兄は家まで担いで帰って寝かせてくれたらしい。)一つ気がかりなことがあって、まだうっすらと白い朝の光の中を、昨日少女を見つけた崖を目指して飛んだ。

「まさか…な。」

当然、彼女は家へ帰っているだろう。そうとまでは行かなくても、近くの村で休んでいるとか。せめて、まだあの崖にとどまっているということは無いはずだ。

だが、カジマヤの希望的観測に基づく予想は全て外れた。彼女は昨日彼が海から助け出した格好のまま、(文字通り)崖っぷちに座っていたのだ。

「嘘だろお!?」

罪悪感がふつふつと湧き上がる。自分は彼女を置き去りにしたのだ。彼は自分が空を飛んでやってきたように見えるかもしれないなどと(そしてそれが、人間の目には非常に奇妙に映ると)言う事は全く考えずに彼女の前に降り立って、驚く少女の肩をつかんだ。

「何で帰ってないんだよ!?」

つまり、帰ろうとしなかったのか、という意味だが、彼は非常に動転していて、些細な文法にこだわれるような状態ではなかった。

「あなた、知ってるの?」

「は?」

少女は別段衰弱した様子も見せず、カジマヤに問いかけた。カジマヤには、自分の言葉が無視された事と、彼女が日本語を話したという事二つに対して同時に驚かなければならなかった。

「知ってるの?私に何が起きたか、ねえ!」

「え、うー…。」

逆に腕をつかまれて、カジマヤはすっかり調子を狂わされてしまった。自分と同じくらい、いや、自分以上に混乱しているカジマヤを見て、彼女は諦めたようにため息をついた。彼女はカジマヤの腕を放して、座った姿勢のままうなだれた。カジマヤはその様子をじっと観察した。

髪の毛は短く切られている。さくらよりも短いとび色の髪は光の加減によっては黒糖の色にも見える。今ではすっかり乾いた髪の毛は、それぞれが好き勝手な方向にはねている。手足は少し痩せすぎなんじゃないだろうかと思うほどに細かったが、健康的な色に焼けていた。ショッキングピンクのキャミソールと、デニムのショートパンツ(と、おそらくその下の下着)以外には何身につけていない。とりあえず、今度は乾いている自分の上着を、カジマヤは彼女に差し出した。

「きみは、そこの崖の下で溺れてたんだよ」

「うーん…それは覚えてるんだけど」

彼女は受け取って、上着を身体に巻きつけた。体格の小さなシーサーの服も、彼女にとっては少し大きいようだった。

「でも、覚えてるのはそれだけ」

「記憶喪失…てやつ?」

カジマヤは相手を刺激しないようにゆっくりと、彼女の隣に座った。

「そういえば…昨日助けてくれたのはあなただったのよね。それも覚えてるわ。有難う」

どう致しまして、といいかけて、その後置き去りにしたことを思い出す。カジマヤは何も言わずに、喉の奥で難しいうなり声を上げた。

「ここはどこ?」

「本島の西にある小さな島だよ…多分きみは本島から流れてきたんだと思う」

指差した先には、朝の光に徐々にかび上がる対岸の黒い影が見えた。


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