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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The kiss and the light-2

「だって、目立つでしょ?」

俺は彼女が気に入った。それがいけなかったのだと後になって思い知ったのだが。彼女は何処と無く、型破りなような、つかみどころの無い雲のような少女だった。

「この日が来るって解ってたし、色んな想像してたけど、外人だとは思わなかったなぁ」

きっと、この少女は誰にでもこんな調子で話しかけるのだろう。ふわふわと無防備に、まるで何ヶ月かぶりにあった知り合いと会話をするみたいに。

「人生ってのは、予想がつかないもんだ」

真面目な顔をしてそういうと、少女は笑った。

「ふふふ、おじさんくさーい」

「そうか?」

復讐と過去の記憶にがんじがらめになる毎日から抜け出すためのヒントをくれる存在だった。

「おじさん、名前は?」

「おいおい、仮にも“結婚”の相手におじさんはないだろ」

実際的な話をすることに躊躇はなかった。怖気づいている段階ではなかったし、その頃の俺は、どこか焦ってもいた。今考えれば、覚悟していたとは言え、いきなり現れた男に貞操を奪われることについての話をしていたのだ。それなのにまるで俺は、猫の名前にポチと名づけるか否かの話をしているみたいな話し方をした。つくづく女の扱いに向いていないと思う。しかし、彼女は笑って言った。

「だから名前を聞いてるんだよー、おじさんっ」

斜に構える俺の事を笑い飛ばす。

「俺は飆だ」

「わーる、かぁ」

マフラーから少しのぞく口から、白い息が漏れる。丈の余っている制服と、その袖口からのはみ出た、目いっぱい伸ばしたカーディガンの袖。それを手袋代わりにしのぐには、あまりに寒い日だった。

「ほら」

俺は手袋を外して、少女に寄越した。

「わぁ、ありがとー」

俺に妹が居たら、こんな風に甲斐甲斐しく世話を焼いたり出来たんだろうか。その子を家まで送り、その日はそれで別れた。また逢うことはわかっていたし、お互いに拒む気がないのも解っていた。

それが俺と、菊池美桜との出会いだった。

そして、それは誰にも、語ったことはない。


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