想いの輝く場所(前編)-7
奏子は同じように考えていてくれるだろうか。
…それとも、6歳年下のオレなんて対象外?
「大人だもんなぁ…」
ポツリと呟いた声が、奏子との間に見えない壁があるように感じた。
奏子はあまり言葉にしない。
だからこそたまに言ってくれる言葉がすごい嬉しいんだけど。
モヤモヤとした不安が胸を締め付ける。
こんな不安を感じる自分に笑ってしまう。奏子に相当ハマってるんだなぁと。
小さくため息をついて、廊下の角を曲がろうとして人とぶつかった。
「おっとごめん…、って美和…」
ぶつかった相手は同じクラスの美和だった。
腕を組みながら強気な瞳で見上げて来る。
「悠、美月先生が好きなんだ?」
「…なんで」
一瞬言葉に詰まり、絞り出した声は自分ものとは思えないくらい低かった。
「寝てる先生にキスしたじゃん」
…見られてたのか…。
確かに今日は鍵もかけていなかったし、ドアのカーテンも引いていなかった。
少し、話が出来ればいいと思って。
――自分の不注意だ。
「違う、あれは…。先生が寝てたから絆創膏くれって耳元で言っただけ。起きなかったけど」
「嘘つかないでよ!漸くわかった、あんたが誰とも遊ばなくなった理由。本命が出来たって言う割には一緒にいるとこ誰も見たことがないのもね!」
美和の言葉にぐっと息が詰まる。
「まさか学校の先生だったとはね」
吐き捨てる様に美和が言う。
「相手にされる訳ないじゃん。相手は先生だよ?すごい年上で大人だよ!?」
その言葉に少し胸を撫で下ろす。
美和が勘違いしてくれていて助かった。
美和はただオレが一方的に奏子を好きなだけ、と思っているようだ。
なんとしても、ここで食い止めなければ。奏子に迷惑が及ぶ様なことは避けたい。
今までずっと秘密にしてきた意味がなくなる――。
「美和には関係ないだろ」
「関係なくないよ!」
美和に背を向けて歩き出したオレの後ろで美和が声を張り上げる。
制服のネクタイをぐいっと引っ張られて、振り向きざまに唇に柔らかいものが押し付けられる。
「…っ!?」
――美和!?
一瞬、自分に何が起きているのかわからなかった。
ただ、奏子の唇とは違う。
奏子の匂いじゃない。
ぐいっと美和の肩を引き離す。