Blossom-3
ガチャ…
入り口をマットで隠し、小部屋に入る。
ひとりになれた気がして息を吐く。
過去のことだ。
恋愛とは色々負担を背負うものだということもなんとなく知れた。
(こりゃ親がケンカするわけだわ…)
そういう面では結果オーライ。次に生かそう。
ポジティブがアンナの取り柄だ。
と、突然奥で何かが立ち上がった。
「ここ、よくわかったじゃん」
「あ、さすが………」
隠れようと思っていたマットの奥から先客があらわれた。
「さっきもここに隠れればよかったのに…」
「ドアの後ろでも分かんなかった癖によく言うよ」
「うっさい」
キョウヘイは意地悪く笑いながら少し横に移動する。
隣、どうぞ。ということだろう。マットと壁の隙間。少し狭いスペースだ。
「ありがと」
そうして隣に座ってみると、ふと気付いた。
「そういえば、あたし達こうして2人で話すのほぼないよね」
キョウヘイはバカにしたように返事をする。
「…そーね」
アンナ達の高校は紺色のセーラー服で、もちろん、キョウヘイも学ランという出
で立ち。
整った顔の茶色い目に睨まれて、アンナはギクリとして顔をそらす。
(顔が整っていて、完璧すぎる人って何だか苦手)
似合いすぎだって、学ラン。
「何?その睨み」
アンナは下をむいて笑いながらいう。
「アンナちゃんはソウ君に夢中だったもんねー」
頭が真っ白になる。
「…知ってたの?」
「まーね。ちょいちょい相談受けてたし」
「そうだん…。みんな知ってるのかな…」
「オレだけだよ、大丈夫」
「そっか…」
(相談してたんだ……じゃあ…)
少し息をのむ。
「別れた理由も知ってるの?」
キョウヘイは頭をかきながらめんどくさそうに答える。
「そんなこと聞いてどうすんの?自分がツラくなるだけじゃん」
「………うん」
知られたくない。あんなこと。自分はちょっと前の自分じゃないんだって。夢みてたものではないって、思い知らされて………。現実はあんなものだって知れたのに、受け入れられない。
あの…さっきのソウの言葉は…きっとまだアンナのことを好きだって言っているようなものではないのか?
キライじゃなかった。
今でもキライじゃない。
でもこれは好きとも呼ばないんじゃないか?
告白されて、嬉しくて、付き合って。はじめての彼氏でちょっぴり浮かれて。