投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

バッドブースター
【学園物 官能小説】

バッドブースターの最初へ バッドブースター 0 バッドブースター 2 バッドブースターの最後へ

バッドブースター-1

「嘘…」
渡辺藍(ワタナベアイ)な驚愕の色を隠せないまま、事の一部始終を目撃していた。

事件が起こったのは、日曜日である本日、藍が高校のクラスメートで友人の平山尚子(ヒラヤマショウコ)と共にショッピングを楽しんでいた時であった。
藍がある店の中から、ふとウィンドウ越しに外に目をやると、向かいの歩道に、見慣れた少年が立っているのに気付いた。
少年は藍がいつも見ている時と同じようにぼーっとしているようでもあったが、何かを待っているようでもあった。
無意識のうちに目が吸いよせられる。藍が想う少年での元へ。
しばらくの間、じっと見つめていたらしく、その様子を訝しんだ尚子が声をかけてきた。
「どうしたの藍?何かあるの?」
「うん…向かいの店の前に…」
「店の前?あー、あれ佐々木じゃん。うっわー、こんなトコからよく分かったね」
確かに尚子の言う通り、片側三車線の道路を挟んでいる上に、店の中からなので、この場所からあの位置にいる人間を特定するのはなかなかに難しい。
「ふうん、それで佐々木に愛の視線を送ってたってわけ?」
「尚子!」
からかいに対してつい声が大きくなってしまう。否定できないのが悔しい。
「せっかくなんだから、声かけてみたら?」
「え…でも…」
「あーもう!なに躊躇ってんのよ!そんなんだから、いつまでも仲が進展しないんでしょーが!」
決心がつかない弱気な少女にイラ立つ尚子は、彼女を店の外へ無理矢理引っ張り出した。冷房の効いていた店から出ると、余計に初夏の暑さを感じる。
そして、佐々木少年の元に再び目を向けた時、
「嘘…」
それは起こった。

想いを寄せていた少年の前に現れたのは、自分達よりも少し年上であろう女性であった。茶色がかったロングヘア、薄着ゆえにさらに強調されている豊かなバスト、そしてすらりと伸びた脚には、同性でも思わず目を奪われる。そんな『美しい』女性と少年は、とても親しげに会話をしていた。
「近藤…さん?」
「近藤さんって…あの人のこと?知り合いなの?」
震える声で藍が聞き返す。
「同じマンションの201号室の人。勉強見てもらったりしてるから知ってるの」
「な、なんか、恋人みたいだよね…」
消え入りそうな藍の声。震える体はそのままに、その目は二人の様子をじっと見つめていた。そんな今にも壊れそうな少女に尚子はなにも答えられなかった。
やがて、佐々木してすらと近藤というらしい女性は連れだって、人混みのなかに消えていった。
「藍…」
その場で固まったまま動けない藍に、心配そうに声をかける尚子。
「……」
ただ少女は立ち尽くすのみであった。


――翌日――
月の名を冠し、その名だけで多くの学生に倦怠感をもたらす魔性を秘めた日……
――用するに月曜日。

(眠……)
佐々木佑助(ササキユウスケ)は睡魔という己の中に潜む悪魔と契約し、1〜4限の授業という時間を代償として与え、睡眠という快楽を得ていた。それでもなお、眠気がおさまらないというのだ。
「毎日ホント眠そうだよなー佐々木は」
佑助の友人の一人、伊藤俊太(イトウシュンタ)が今だ机に突っ伏している悪魔との契約者に声をかけてきた。
実は俊太の言う通り、佑助の瞼が重いのは今日に限ったことではない。
佑助は一人暮らしである。いろいろとわけありで。
昔は父、母、姉、そして佑助の四人家族だったのだが、母の不倫が原因で両親が離婚し、彼は父親に引き取られた。その後、父は病気で亡くなってしまったので、佑助が取り残されたと言う次第である。
再婚していた母と姉が共に暮らすよう言って来たが、離婚の原因を作った上に父の見舞いに一度も来なかった母を許すことができず、申し出を拒絶した。
現在は、父方の祖父母からの援助を受けながら父の残した一人で住むには広すぎる一軒家に住んでいる。
一人暮らしは朝が大変だ。自分で朝食を作り、洗濯物を干す。朝に弱い低血圧の少年にはとても気力のいるものなのだ。
……という理由で、佑助は足りない睡眠時間を学校で補っている。
「あれ?今日は図書室にいかないのか?」
いつもは、昼食は昼休み前に済ましてしまい、時間になると同時に教室を出ていくはずの佑助は、何故か今日はこの時間になっても動こうとしない。
「んー、何か気分じゃないんだよ」
適当に答えを返しておいた。あながち的外れでもないが。

視線を自分の右隣の席へと向ける。本来、そこに居るべき少女は今日、学校には来ていない。


バッドブースターの最初へ バッドブースター 0 バッドブースター 2 バッドブースターの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前