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バッドブースター
【学園物 官能小説】

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バッドブースター-2

彼女は自分が図書室にいるときは必ずといっていいほど高い頻度でそこにいた。視線を交し合う日々が続くうちに、いつしか図書室へいくのは、彼女の姿を見るためになっていた。彼女と目が合うと、自然と笑顔になっている自分がいた。端的に言えば、好きになっていた。

そんな自分のお目当ての少女――渡辺藍――がいないのに、図書室へわざわざ足を運ぶ必要はあまりない。
物思いに耽っていた自分に気付き、佑助が視線を戻すと、今自分が考えていた人とは違う女の子が佑助を見下ろしているのに気付いた。
「平山さん……な、何?」
思わずそう聞いたのは、彼女が明らかに俺にたいしての敵意を剥き出しにしていたからだ。
「佐々木。ちょっと付き合って欲しいんだけど」
「え…何で――」
「付き合って欲しいんだけど」
「……はい」
有無を言わさぬ圧力。黙って従うことにした。


連れてこられたのは、人気のない校舎裏だった。
「こんなとこに連れてきて…俺、シメられるのか?」
冗談のつもりで佑助は聞いてみた。
「場合によってはね」
冗談ではない。
「今日、藍が休んでるわよね?」
確認するように聞いてくる。藍とは渡辺さんの名前のはずだ。佑助は頷く。
「あんたのせいよ」
佑助は思わず「へ!?」とマヌケな声を出しそうになって――すんでのところで堪えた。
そんなことすら許さないというようなオーラが平山尚子から立ちのぼっているのを佑助ははっきりと視た。
「昨日、女の人と一緒にいたでしょ。藍はそれ見てショックで寝込んでるのよ」
尚子は、混乱し動揺する佑助にとどめの一撃を、最強の言葉を、フィニッシュブローを浴びせた。
「藍は、あんたのことが好きなのよ!」

「えっ!?」
佑助はぶん殴られたような衝撃を感じた。尚子の一撃をまともに受けてしまったのだ。佑助はフラつく頭を必死にたてなおそうとする。
そうであって欲しいという願望はあったが、まさか、そんな…
いや、何となく、そんな様子はあった気がする。ただ佑助は、それを自分の勝手な妄想と決めつけて、片付けてきただけだ。
「理不尽だってのはわかってる。誰と付き合おうがあんたの自由。でも、藍は大切な友達だから。藍の気持ちに答えないままに他の女とデートしてるのは――」
「ちょっと、ちょっとストップ!」
怒りのままにまくしたてる尚子を、佑助の声が遮った。
「たぶんそれ、誤解だから…」
「はぁ?」
「昨日の人って、俺等より少し年上の感じで、茶髪のロングの人だろ?」
「そうよ」
「それ、俺の姉…」
「へ?」
今度は、尚子が混乱する番だった。ということは、もしかしてただのはやとちり…?
しかし、すぐに思い直す。
「何言ってんのよ。あの人の名字とあんたの名字違うでしょ!そんな嘘じゃ――」
「本当だって!ウチは色々あって別々に引き取られたから………まだ疑うなら、確認とってみたら?なんか知り合いっぽいし」
「姉の名前は?」
「綾子。近藤綾子」
確かに昨日みた女性は、紛れもなく近藤綾子であったが。
尚子はとっさに携帯を取りだし、登録してあるアドレスから近藤綾子に電話をかける。
三回コール音がなってから、女性の「もしもし」という声が聞こえてきた。
「尚子ちゃん?どうしたの?」
「えっと、少し聞きたいことがあって…」
こんな話をいきなりしてもいいのだろうか。尚子は少し躊躇った。

――そう、躊躇ったのは少しだけだった。
「綾子さんに名字の違う弟っていますか?」
「何でいきなりそんなこと聞くの?」
至極当然の反応だろう。しかし尚子はそんなことは気にしない。
「いいから答えてください。大事なことなんです。もしいるなら、そいつもしかして佐々木佑助って名前じゃないですか?」
「…そうだけど」
綾子の声には僅ながらに驚きの感情がのぞいている。「どうしてそれを」といったとこだろう。
尚子もまた、佑助の言った通りであったことに、内心目を丸くしていた。
「そうですか。それじゃあまた」
「あ――」
用件がおわると尚子はさっさと通話を切ってしまった。いまは綾子とこれ以上話すつもりはない。
「えと…」
佑助に向き直る。急に気恥ずかしくなった。
「どうやら、私と藍のはやとちりだったみたいね。ゴメン」
尚子は素直に謝る。先刻の怒りは嘘のように消え失せていた。
恥ずかしさは拭いきれないのか、そのまま走り去って行こうとする。
が、ふと立ち止まり、佑助に背を向けたまま、
「でも、私が言った藍の事は、れっきとした事実だから」
といって、校舎に消えていった。


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