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はるかぜ
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はるのゆめのごとし-5

「雨水、雨水っ」

ロビーで待つ雨水にバスローブのまま駆け寄る。

「みて、肌が、つやつや」

雨水はコーヒーを吐き出さんばかりの勢いで笑う。

「わかった、わかった」

「雨水は優しいね。春風に会うからでしょう?」

私は勘違いをしていた。
その時はまだ気づいていなかった。



次に行ったのはどこかのスタジオだった。
あのエステの女性も一緒に来て、あれよあれよという間に控え室に連れて行かれた。

そこでやっとわかった。


雨水は、私を使って何かをするつもりだと。

控え室には美人な黒髪の長身の人がいて、その人は私の顔を見ると驚いたように私の背後に立つ雨水に声をかけた。

「雨水から話を聞いた時はどうかと思ったけれど、良いじゃない」

振り向かなくても分かる。
雨水はきっとにやりと笑っている。



結局、雨水に文句も言えず、私は少し変わった透けた白い布を何枚も縫い合わせた服を着せられ、生まれて初めてプロにメイクをしてもらい、髪を結ってもらって、その髪にもたくさんの白い薔薇を飾られていた。

雨水がスタッフだよと教えてくれた人たちが居なくなって、ようやく、雨水を睨みつけた。


「……何なの」

雨水は満足そうに笑っている。
にやにやと。

「言っただろ?暁と春風とずっと一緒に居れるようにするって。Rain Emptyはさ、今は俺が仕切ってるの」

首を傾げる。あんまり動くと薔薇が落ちそうだ。

「りっちゃん、俺のお願いはね、君にモデルをやって貰うこと」

雨水がサングラスを外して言った。
目が真剣だった。

「……モデル?」

意味が分からない。
今日出てきた田舎者に何を言っているんだろう。



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