陽だまりの詩 19-1
翌日のことだった。
奏のところに行こうと準備を始めたとき、お父さんから電話があった。
「…お父さん、おはようございます」
「おう、それより、奏が目覚めた」
「……はい」
なんとなく、気付いていた。
耳に入ってくるお父さんの声は鼻声だから。
「お前に会いたがってるよ」
「わかりました、今すぐ行きます」
電話を切ると、急いで部屋を飛び出した。
***
車を飛ばして病院に到着した。
外はさすがにかなり寒い。
体を震わせながら駐車場を後にする。
だが、そこで思いがけない人物に出会った。
「…アキ?」
「…ハル」
病院の入口にはアキの姿があった。
どうやら俺を待っていたようだ。
「奏ちゃん、歩けなくなったんだってね」
アキは今にも泣きそうな顔をしている。
アキだって仕事とはいえ、奏のために頑張ってくれていたんだ。
「…ああ、もう奏は歩けない」
「…そっか」
「……じゃあ、またな」
俺はそう言って足を進める。
だが、俺がアキの横をすり抜けようとしたとき、アキは俺の腕を掴んだ。
「待って」
「…なんだよ」
「歩けなくなっても…奏ちゃんが…一番?」
そうか…
アキはまだ俺のことを諦めていなかったのか。
「ごめんなアキ、俺は奏とずっと一緒にいる。いくらハンデがあっても、これからもずっと」
アキの目をまっすぐ見て言った。
「…っ…ぐすっ…わかった」
それを聞いて、アキは本気で泣いていた。
「奏の力にも、俺の力にもなってくれてありがとう。アキ」
「う…ん…頑張ってね、ハル」
「ああ」
そう言って俺は病院に入り、真っ先に奏の元に向かった。