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きみおもふ。
【純愛 恋愛小説】

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きみおもふ。-23

「イトコなのに気持ち悪いとか思うかもしれないわね。でもね、誰かを好きになることは自由だと叔母さんは思うの。私は逸の気持ちを大切にしてやりたいわ。だからね」
逸母は友夏の顔を覗き込んだ。
「友夏ちゃんがその気ないんだったら、どうかお願い。暫く会わないでやってくれないかしら。あの子今ボロボロで不安定な状態なの。ね、お願い」
しかし友夏は分かりましたとは言わなかった。再び頭を下げる。
「叔母さんの言いたいこと、よく分かります。正直自分の気持ちはまだ分かりません。でも今会わないと私、後で後悔する。お願いします、逸くんに会わせて」
「友夏ちゃん…」
「絶対逸くんを傷つけたりなんかしない。約束しますから」
必死な友夏に、逸母はとうとう折れた。
「分かった。逸の部屋に行きなさい、そこにいるから」
心からホッとしたような表情になる友夏。
「ありがとうございます!」
そうして急いで靴を脱ぐと階段を駆け上がっていった。
逸母はそんな彼女の後ろ姿を見つめながら思う。
(ついこの前まで恥ずかしがり屋のおちびさんだったあの子がこんなに粘るなんてね…)
「若いっていいわねぇ」
呟いて、自分の年令に一人溜め息をつく逸母であった。

数日前と同じように、友夏は逸の部屋の前に立った。今度は深呼吸せず扉を叩く。
「逸くん、友夏」
返事など返ってくるはずもないので友夏は自分でどんどん話していく。
「あのね、部屋の中にいていいからちゃんと聞いて。私、志望校変えたの。鳳宮に。分かる?国瀧のすぐ傍にある大学だよ」
ガサガサ鞄から紙を取出す友夏。
「資料によるとね、私まだD判定になるんだけどね、頑張ってみるから」
すっとドアを見据える。

「今度は私が追い掛ける、逸くんのこと」

しん、とする辺り。友夏は不安になる。
「ねぇ逸くん聞いてる?寝てたりしない?」
思わず把手に手を掛けた。
「逸くん?」

かちゃっ。

あっけらかんと扉が開く。鍵がかかっているだろうと思っていた友夏はかなり驚いてしまった。
「ご、ごめん…まさか開いちゃうなんて……」
恐る恐る顔をあげたすぐ傍に、彼は立っていた。何も言わず、ただ友夏を見下ろしている。
「あの、聞いてた?」
問い掛けにも答えない。
「私……」
友夏は俯いて話しだす。
「逸くんに好きって言われてすごく嬉しかったよ。でも今までそんな風に見たことなくて少し戸惑ったけど……。あれからね、色々考えた」


暗闇の中を友夏の言葉がゆっくり広がっていく。優しく、静かに。
「好きとか、まだよく分からないけど……でもね、分かったことが少しあって。逸くんが無理したり元気がなかったりするのは嫌だってこと。いつも笑っててほしい。それから、傍にいると一番ホッとして安心できる相手は逸くんだってこと」
顔を上げて恥ずかしそうに友夏は笑った。


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