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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 18-5

***

面会謝絶。

部屋の前には、そう書いてある札がかけてあった。

お父さんは一呼吸置いて扉を開けた。
「……」
そこにはベッドの上で眠っている奏の姿があった。
頭には包帯やよくわからないコードなのが取り付けてある。
周りにはいくつもの機械が並んでいた。

顔には傷一つなかった。

だが、足には包帯。

「…春陽さん、奏は」
憔悴仕切ったお母さんが言う。

奏は後頭部を強く打ちつけ、一時は危険な状態だったものの、幸い現在は命に別状はないらしい。
意識も数日中に回復するという。

だが、大型バイクが直撃した足は、衝撃と傷で神経を激しく損傷してしまった。

もう歩くことはできないらしい。

そんなことをお母さんは説明してくれた。

「春陽」
「こんなこと、あっていいんですかね?」
俺は顔を上げて天井を見つめる。

奏が生きていることを、直に目で見て理解すると、突然一気に悲しみと怒りが湧いてくるのはなぜだろうか。

そして、自虐の念が働くのだ。

「俺の周りにいる人は、みんなこうなっていくんでしょうか…」
「お前は何も悪くない」
お父さんは言う。
だが、俺の口は止まらなかった。
「いっそ、俺は誰とも関わらないようにしたほうがいいのかもしれませんね」
「…チ」
「そうだ、奏に出会わなければ、こんなことにならなかったんだよ。もう奏に…」
その瞬間、頬を激しい痛みが襲った。

気付けば俺は床に倒れていた。
「……すまん妹、約束、破った」
俺はお父さんに殴られたのか。
顔を上げると自分の腕を握りしめるお父さんの姿があった。
「春陽…お前はなんでそうやって…自分で何もかも背負おうとするんだ…」
その言葉に、ズキズキと痛む頬を押さえながら俺は答えた。
「でも…奏の努力が無意味になったのは事実です」
「それがお前のせいであるのなら、俺はどうすればいい。買いに行ってもいいと許可をしたのはこの俺だ」
「……」
「だが俺は父親として、自責の念にかられる暇はないんだよ!今は奏が無事に目覚めるまで見守ることで精一杯なんだ!お前はどうなんだ?あ?」
「……すいません」

お父さんだって、苦しんでいるんだ。
また俺は、揺らいだ心をこの人に助けられてしまった。

「しばらくここで頭を冷やせ。ちょっと俺達は出てくる」
お父さんは冷たく言うと、お母さんの手を引いて出て行った。
「…すいません」
言い終える前に、扉は閉まってしまった。


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