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「魚と彼と下半身」
【性転換/フタナリ 官能小説】

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「魚と彼と下半身」-5

私は、なんとなく自分の尾びれのあたりが変に気になりだした。そう思っていると、彼がこちらへ寄ってきて、
「その尾びれの模様なに?文字みたいだけど。」
「たぶんこれが悪いのよ。この文字が魔力かなにかもってるみたいで、わたしはこうなったんだと思うの。」
「魔力ね・・・。半年前の二人なら、そんなもの信じてなかったし、何の興味もなかったけど、今、こんなお前の姿見たらね・・・・」
「なんかさっきよりこの尾びれ気になるの。なにか変わってない?」
「うん、気付かなかっただけなのかもしれないけど、さっきより今の方が、その文字光ってるような気がする。」
「・・・」
なんとなく嫌な予感がする。
「なんか不思議な感覚がする。俺がお前になってるような。水槽の中にいるような。たまに目の前にそのお前の横にいる魚が大きく見える気がするし。」
あのときの私と同じだった。それに私も感じている。尾びれに不思議な感覚、どこか太古の印象を感じさせるものを感じただけではない。彼になったような気がする。水槽を見ているような、芳香剤を置いたばかりでまだ匂う部屋の空気をすっているような。嫌な予感。そして、案の定、窓が青白く光り、鼓膜が破れそうなくらいの大きなおとが、光とほぼ同時に鳴った。
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 幸い、このマンションに落ちたわけではなかった。足元には、彼が来ていた服や下着が落ちている。自分の足の体毛は濃く、下腹部には彼のそれがあった。予想していた通り。前を見ると、彼の上半身が小さくなって魚の下半身の上についている、かわいらしい男人魚。まだ呼吸のコツをしらないらしく、苦しそう。一度自分の姿をしっかり確認したくて、全身がうつる鏡のところまで歩く。やはり下半身は彼で、上半身は私のものらしい。全裸の姿の妙な身体が映っている。自分の胸を眺めていると、今までに感じたことの無い興奮が、私の下半身に襲ってきた。そして自分の胸を自分の胸で揉んでみる。気持ちいい。今までやったことのある自慰より、もしかしたら彼に揉まれたときより気持ちいかもしれない。種類が違う。未知の快楽に浸っていると、彼の、いや今は私の、それが立っている。もうがまんできない。衝動は抑えられない。こんな感覚は始めて。彼はいま、泳ぎやえら呼吸の練習をしている。そっとその場を離れて、鏡に近寄り、人魚の彼の視界には入らないところで、握る。3分くらいそれをして、やっと今まで味わったことのない種類の快楽が、絶頂に達し、白いものが出た。人生で、女のオルガズムだけでなく男のオルガズムまで味わえるなんて、私は幸せかもしれない。でも男のそれは一瞬だった。糸を引く手を眺めてみる。そして体中、力が抜ける。自分がやったことの馬鹿さ加減に失望し、ティッシュで床に零れたものをふき取ると、もうなにがなんだかわからなくてただぼぉっと、彼が必死に泳ぐ練習をしている姿を、眺めてみる。そしてどうしようもない虚無感とため息が私を襲う。
今日はいろんなことがあった。
 排泄物の散らばる部屋で数ヶ月ぶりに再会した男女。
 男人魚の前で手淫するオトコオンナ。
 水槽の中の彼を可愛がりながら、私はここでオトコオンナのまま暮らしていくのかな。
 こんな下品な夫婦、童話にもならない・・
 私のこの身体、誰にもバレないかな。更衣室やトイレは、どっちに行けば?
 ああもう誰にも会いたくない。このまま彼と隠居していたい。
 せめてさっき逃げ出した猫、帰ってきて欲しい。
 そういえば、私の前の前の下半身、そろそろ捕まったかな。


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