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Memory
【純愛 恋愛小説】

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Memory-14

『やっぱり…やっぱり自分の気持ちに嘘つけない…好き…っ。涼介が好きなの…。』
途絶え途絶えに涼介に自分の気持ちを伝える。視界は涙と雨でぼやけていた。けれど、自分の気持ちだけははっきりしている。
涼介も私の耳元で、俺も好きだ、と囁き、私を抱きしめる力を一層強めた。
涼介の体は凄く冷たくて、その原因を作ったのは私なのだ…と思うと、酷く胸が痛んだ。


『…本当にいいのか…楓??』
彼女は静かに頷いた。ずぶ濡れのまま、部屋に戻ったので、俺達の座り込んでいるベッドには、大きな染みができている。
『…私が死ぬ前に、涼介には全部見て欲しいの…。』
楓の唇が、髪から流れ落ちた滴のせいで、キラキラ光っている。目の前にいる女性は目を見張る程色っぽい。
『後悔しないか…?』
俺の言葉で、楓は首を横に振る。
『大丈夫…。』
ゆっくりと俺は目を閉じた。
『…分かった。』
そっと、彼女の額に口づける。そして、ゆっくりと唇を下へと滑らせ、彼女の唇と重ね合わせた。
唇を合わせたまま、優しく楓を押し倒す。そして、彼女のボタンを一つづ外していった。楓の白い鎖骨が、少しずつ露わになっていき、俺は息を飲む。ガラス細工を扱う時のように、俺の動作は一つ一つ丁寧で慎重だった。
俺が楓の首にそっと唇を落とすと、彼女はかすかに震えた。そんな仕草がたまらない程愛おしく思える。そして俺は再び彼女の唇にキスをしようと、いったん顔を上げた。…俺の手が止まる。
彼女の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちていたのだ。
俺はため息混じりに言葉を発する。
『…やめよう。楓が無理してするくらいなら…俺は…』
『違うの。』
楓が俺の言葉を遮った。
『…涼介を好き過ぎて…どうしていいか分からないの…。』
『楓…。』
俺は悲哀を込めた目で彼女を見ることしかできない。
『きっと…きっと私は1ヶ月も経てば、涼介の事も分からなくなるわ。こんなに好きなのに…こんなにも大切なのに…そんな想いもあたしの脳はもうすぐ忘れちゃう…。それが凄く怖くて…。』
彼女の体は小刻みに震えていた。何とかしてやりたい…しかし俺がいくら頑張っても、どうにもならない事なのだ。
『脳が忘れたって、魂は…心は覚えてるさ…。』
その俺の言葉を聞いた楓は一瞬ひどく悲しそうな顔をした。けれど再び無理に笑顔を作る。
『そうだねっ…魂は…心はずっと涼介の事覚えて……っ。…』
しかし、やはりその笑顔もすぐに崩れた。
『…楓?』
俺が心配そうに楓の顔を覗きこむと、彼女はしゃくりあげ泣き始めた。
『……なっ…なんで…私死んじゃうんだろぉ…。涼介と離れたくない…涼介の事忘れたくないょぉ…』
胸がいっぱいになった。溢れ出す感情のせいで、言葉が出ない。言葉の変わりに、俺の目の縁にはじわじわと涙が湧き上がっていた。俺は何も言わずに彼女をギュッと抱きしめる。


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