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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 17-5

***

この日は久しぶりに奏のお母さんが病室に現れた。
「どうも」
「あら、春陽さん、いらしてたんですか」
「仕事が終わってもすることがないですし、入り浸っちゃってます」
美沙がいなくなってからは、病院に来る理由は奏しかなかった。
それでも今までと来る頻度が変わらないのは、それくらいすることがないからだ。
「奏もうれしそうね」
「えへへ!」
それにしても、相変わらず若くて綺麗なお母さんだな…
「そういえば、お父さんが最近よく来るでしょ?」
お母さんは笑顔で花瓶の水を換えながら言った。
「うん、来るね」
「お父さんったら、なんだか春陽さんのことが悔しいみたいで、時間を見つけては邪魔しに来てるみたいなのよ。本当に子どもみたい」
「……」
やっぱりか、あの人は…


しばらく三人で話していたが、奏はこれから検査らしいので、そろそろ帰ることにした。

お母さんと共に、奏を診察室まで送る。
「春陽さん、また来てくださいね」
「ああ、次は、クリスマスになりそうだけど」
「はい!楽しみにしてます!」
「ああ」
「お母さんも、ありがとう」
「帰りは気をつけて病室に戻るのよ」
「はーい」
それだけ言うと、奏は笑顔で診察室に入って行った。

「…じゃあ、病院の外まで行きますか」
「そうですね」
そう言って二人で歩き出すと、すぐにお母さんは切り出した。
「春陽さん」
「はい?」
「奏で本当にいいのですか?」
「え?」
瞬時に微妙な空気が漂う。
もしかしたら、お母さんは俺と奏のことが反対なんじゃ…
そんなことを言われれば、嫌でもマイナスの要素が頭に浮かぶ。
「…奏はまだ十六です。世間のことを何も知りません。もちろん春陽さんと交際することについては異論はありませんが、これからも奏の面倒を見続けていては大変ではないですか?」
まずは、よかった。
反対されているわけじゃないみたいだ。
「お母さん、俺はもう、奏のことが好きで好きでたまらないんです」
うわ、好きな女の子の母親になんてこと言ってるんだ俺は…
「俺は奏の身の回りのことを手伝うのが、面倒とも大変だとも思ったことはありません。初めて会ったあの日から、きっと俺は奏が好きで、今でもずっと奏の力になりたいと思ってます」
お母さんは微笑みながら聞いている。
「それに、俺だって世間のことなんか何もわかってない小僧なんです。何度、奏やお父さん、美沙、周りの人に助けてもらったことか…」
「…本当にありがとうございます」
お母さんはそれだけ言った。
少々熱く語ってしまって恥ずかしいが、お母さんは俺の意図していることを汲み取ってくれたらしい。

いつの間にか、病院の外に出てしまっていたことに驚きながら、お母さんと別れた。


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