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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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笹沢瀬里奈の悩み 〜Love trouble〜-18

 秋葉は、頭を抱えたくなった。
「うぁ、どーしよ……」
 据え膳食わぬは何とやらという諺が、脳裏へ浮かんでは消える。
 昔は『そういう状況になったら絶対食う!』と自信満々でいたものの、いざその状況に曝されてみれば緊張し過ぎて勃起すらできていないのだ。
「あぁ、昔は青かったなぁ……」
 思わずしみじみしてしまっていた秋葉だが、バスルームの物音で我に返る。
「うわうわうわ」
 とうとう、輝里がシャワーを浴び終えてしまった。
 秋葉はあたふたした揚句に冷静な思考を失って、携帯を手に取り龍之介に電話をかけてしまう。
 プルルルルというお馴染みのコール音の後は毎度お馴染み、留守番電話のアナウンスだ。
「くそっ!」
 秋葉は毒づき、電話を切る。
「あ……当然かぁ」
 しばらく電話はかけるなよと念を押されたにも拘らず、取り乱して電話をかけた自分が悪い。
「今頃は伊藤さんとお楽しみ……できるなんて羨ましいいぃ!」
 秋葉はじたばたしてしまった。
「秋葉……」
「あひゃうひゃひげもっ?!!?」
 シャワーを浴び終えた輝里が部屋に戻って来たため、秋葉は変な声を出してしまう。
 振り向けばそこには、裸身にバスタオル一枚を纏った輝里がいた。
 今度こそ、準備万端の。
「うあうあうあうあうあ」
 秋葉は頭が真っ白になり、口から訳の分からない声を出す。
「秋葉……」
 それを見て、輝里は悲しそうな顔をした。
「か……帰るっ」
 悲しそうな顔は半泣きの顔へシフトチェンジし、輝里はとうとうそう言う。
 これでは自分は丸きり道化だと、輝里は思った。
「えっ……」
 呆気に取られた秋葉の思考はかえって冷静になり、ひどく慌ててしまう。
「何でそんな事っ……」
「だって!!」
 泣きながら、輝里は言った。
「頑張ってここまでしてるのに、手を出さないんだもの!!」
「……!」
 秋葉は、思わず顔を反らした。
「ふぇ……」
 へたりこんで泣き始めた輝里の元へ、秋葉は歩み寄る。
「……ごめん。すんごいセクハラ」
 秋葉は輝里の手を取り、自らの股間へやった。
「……」
「緊張し過ぎて勃たないんだ……」
「!」
 輝里は思わず秋葉を見上げる。
「もうちょっとお付き合いしてもっと輝里の事を知れば、勃つとは思うけど……今は、無理」
「秋葉……」
 準備万端の女の子を目の前にして男性機能が働かないなどという、男にしてみれば人生最大のピンチであろう事を率直に打ち明けてくれた秋葉。
「……うん」
 ならば自分がまるで道化だった事も許してしまえると、輝里は思った。
「あ……だ、だ、だからさ!代わりに、一緒に寝よう!?俺、風呂入ってくるから!」


 髪まで洗ってしまう文字通りの『入浴』を済ませ、秋葉はそそくさと風呂から上がった。
「輝里。お待た……」
 やたらに大きなベッドの上に、輝里が突っ伏している。
 部屋の明かりを点けたまま、すぅすぅと寝息を立てて。
「……ありゃ」
 秋葉はぽりぽりと頬を掻いた。
 服を着て寝ると皺になるという観点からか、はたまた秋葉の男性機能が用を為さないせいなのか、無警戒にも下着姿である。
 白地に淡いブルーとイエローで刺繍の施されたお揃いのブラジャーとショーツは、もしかしてこの日のために買い揃えた輝里なりの勝負下着か。
「妙な事になっちまったなぁ……」
 輝里の横に寝転んで、秋葉は呟く。
 自分が恋愛に対してここまでヘタレていたのも驚きだが……役に立たない自身が、今夜は恨めしかった。
 男と女では恥ずかしがり方にだいぶ差があるだろうし、その点から言えば輝里は相当な覚悟をして体を曝したのであろう。
 なのに、抱けない。
「……体力、使わせちまったか」
 秋葉は、片手で輝里の髪を梳いた。
「ん……」
 輝里は小さく呻き、うつ伏せから仰向けになる。
「うわ……」
 間近で見る生身の女の子の肢体は、とても綺麗だった。
 つやつやの唇。
 ほっそりした首。
 華奢な鎖骨。
 滑らかな肌。
 小ぶりな乳房。
 細く括れた腰。
 ふっくらしたお尻。

 ごきゅ……

 落ち着いて輝里を見れば、雑誌のヌードグラビアなど目ではない。
 自然と、喉を鳴らしてしまう。
「……ごめんな」
 秋葉はそう呟き、目を閉じると僅かに開いたその唇にキスをした。


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