jam! 第7話 『蒐蓮寺の怪夜 前編』-8
――キイィ……ン…
また、何か甲高い音がした。
それと同時に感じていた『嫌な空気』が和らぐ。
「ふむ、もう修復しましたか。…さすが守屋の一族は良い腕をしていますね」
男が呟く。
そして僕達に背を向けた。
「さて、用は済みました。……それでは」
仮面の男の足元が、円を描くように淡く光る。いつの間にか鬼も横に来ている。
悠梨ちゃんが相手の意図に気付いた。
「秋次さんっ!!転送陣です!」
「逃がすか!」
二階堂さんが駆け出す……が、
「そういえばこの場所、かなりタチの悪いモノが居着いているようですが……放っておいていいんですか?」
「…何だと?」
男の言葉に足を止める。
そしてそれだけ言い残し、次の瞬間彼らは消えていた。
僅かな光が名残として浮かび、消える。
「…ちっ、逃げられたか」
舌打ち一つ。
でも、男が最後に言った言葉が気になる。
タチの悪いモノ……?
「トシ君ッ!」
「うわっ!?」
突然の大声にビビる。
さっきから姿が見えなかった千里がいきなり目の前に現れた。
「なんだよ千里。どこ行ってたんだ?」
「そんなことより大変なのよぅ!裏っ、お寺の裏にっ」
やたら慌てて千里は言った。
「『首が無い幽霊』がたくさんいるのっ!!」
「「何だって!?」」
僕と二階堂さんがハモる。
……ようやく思い至った。
僕たちは、もともと何でこの蒐蓮寺にやって来たんだっけ―――?
「こっちこっち!」
千里に先導されて寺の裏手へ。
確かそこには広い墓地があったはず………
不確かな記憶をたどりつつ曲がり角を曲がり、
言葉を失った。
目の前に広がる墓場の敷地内には――
数十にも及ぶ首無しの幽霊が漂っていた。
[前編:了]