jam! 第7話 『蒐蓮寺の怪夜 前編』-6
「トシ君に手ぇ出すな!このばかちん!!!!」
――ゴッ!!
「ぐ、おォッ!?」
鈍い音を立てて、おもいっきり殴られた鬼がぶっ飛んで行く。
飛距離的には二階堂さんが飛ばされたのより上じゃないか…?
「――大丈夫、トシ君!?」
「……あ、あぁ」
登場するなり鬼を殴り飛ばした、見慣れた赤い着物を着た少女――千里。
「千里、どうしてここに…?」
「帰りが遅いから心配して探してたの!でも気配を辿ろうにも、この場所って中の気配が分かりにくくて……」
多分、悠梨ちゃんが言っていた『気配を遮断する結界』とやらの影響だろう。
……というか千里、気配とか辿れるのか。
「……にしても派手にぶっ飛ばしたな」
えっへん!と千里は偉そうに無い胸を張って、
「言ったでしょ?『ホントに危なくなったら助けてあげる』って。私、結構強いのよ?」
「あぁ……十分思い知ったよ。サンキュ」
「うん!」
嬉しそうに笑った。
「リショー君!大丈夫か!?っていうか、その子は誰だ!?」
「説明は後でします!」
言いつつ急いで鬼から距離をとる。
鬼が、立ち上がった。
「……貴様。何者、だ?」
「トシ君に何かしようとしたヤツなんかに教えないもん!最近は個人情報の流出は怖いのよ?」
べーっと舌を突き出す。
「……まぁいい。時間は稼いだ。そろそろ、か」
鬼がそう言うのと、
――パキィー―…ン…
と、何かが砕けるような音が聞こえたのは、ほぼ同時だった。
「っ!?」
「何だ!?」
「う……何だ、コレ……」
これを何と表現すればよいだろうか?
何かが、歪んだような感覚。
「…ふむ。おおよそ予定通り、か」
「おい!何しやがった!?」
二階堂さんが鬼に向かって叫ぶが、取り合う気配もない。
――と、その時。
「……おや、何やら騒がしいですね。どうかしましたか?」
本堂から、何かが現れた。