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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 16-8

「奏、もうすぐクリスマスだな」
「…じゃあ…三人でパーティーでもしませんか…?」

既に一時間以上、ずっとこの調子だった。

「俺達二人でするんだよ」
「え…?もしかして美沙ちゃん…彼氏でもできたんですか…?」
「…違う。それは断じて絶対確実にない」
そこだけは否定させてもらう。
どうやら俺は、美沙がいなくなってもシスコンのままらしい。
死んだ妹を想い続けるって相当やばいと皆思うだろうが、きっと気持ちは一生変わらないと思う。
「その…俺らだって…好き合ってるじゃないか。だから…」
言っておいて照れてしまうのは未だに慣れなかった。
「…だめです…三人一緒がいいです…」
無表情とも困惑した顔ともとれる顔で奏は言った。
その瞬間、さすがに俺は、いつまでもわかってくれない苛立ちと、その変わらない態度に、少々憤りを感じてしまった。
「っ!奏!!」
奏はびくっと体を揺らす。
「美沙は死んだんだよ!!もう…認めよう…!」
ここまで強く言うつもりはなかった。
こんなやり方じゃ意味ないのに。
「……美沙ちゃんは…います」
「……う」
その場にへたり込む。
どうしても奏に通じない。
やり方はもっとあるんだろうが、俺は馬鹿正直にこのやり方を続けた。
俺の口から真実を告げて、わかってほしい。
でも、やっぱりだめなのか?

「!」
とっさに顔を上げる。

やばい。
やばい。
やばい。

しかし、我慢できずに一粒、涙が床に零れ落ちた。
精神疲労が限界に達したのか、すぐにボタボタと際限なく落ち出した。

ふと奏を見ると、驚いたのか、目を丸くしてこちらを見ている。
「…なぜ泣いてるんですか…?」
「……美沙が、死んだから」
「…美沙ちゃ…ん…が…?」

今日、何度目の号泣だろうか。

少なくとも、お父さんが家に来て、美沙の遺した思い出を見て。
そして、美沙の書いた紙を見て。

「…!」

そうだ、あの紙だ。

あのメッセージは、俺だけじゃなく、奏にもいえることだ。

慌てながらズボンのポケットを探ると、かさりと乾いた音がした。

「…奏、これを見てくれ」
「……これは?」
「美沙が、最後に遺したメッセージだ」
「……最、後?」
「奏にもわかるだろ?」

奏は黙って紙を受け取った。


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