陽だまりの詩 16-6
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久しぶりに外に出た気がする。
空気はとても冷たいが、空は青かった。
雪もすっかりなくなっていたので、車で向かうことにした。
「待ってろ、奏」
十分くらいで病院に到着。
車を降りると、小走りで奏の病室へ向かった。
エレベーターに乗っている時間さえももどかしく感じる。
ふと考える。
奏は今、どういった状況なのだろうか。
お父さんの言った、心が壊れた、というのが理解できない。
もしかしたら、俺が行ってどうこうできる問題ではないのかもしれない。
でも、どうにかするしかないんだよな、俺は。
エレベーターを降りて、ようやく奏の病室の前にたどり着いた。
「……お父さん」
「……よう」
病室の前にはお父さんが立っていた。
「ご迷惑…おかけしました…」
深々と頭を下げた。
「春陽…いい目だ」
お父さんはにやりと笑った。
名前で呼ばれたのはこれで二度目だ。
前回は尋常ではない違和感を感じたが、今回は少々くすぐったくて、恥ずかしかった。
本当に自分がお父さんの息子であるような気がした。
「奏は…」
「中にいる」
「奏は俺が、最後まで手を引いてやります」
そんなつもりは全くないが、俺は半ばお父さんを睨む形で言った。
「……春陽、奏を頼むぞ」
お父さんは真っ直ぐな目で俺を見てそう言った。
「はい!」
奏もよくその目を見せていたな。
美沙、力を貸してくれ。
俺は力強く扉を開けた。