「③×バレンタイン」-1
バレンタイン…
マンガなんかじゃ、モテない男の子には辛い日、な～んていうけど。
ほんとは。
辛い思いをしてる女の子もたくさんいる日…だと思うの～っ
はぁっ。
って溜息をついてるのは大沢優花。花の(？)高校2年生。片思い５年目、高校まで追いかけてきた強者デス。
片思いの相手は、木村和良。
何で好きになったかっていうと…
かずの背が小さかったから。
二人して小さいから、前ならえをするといつも隣。体育祭の二人三脚も、フォークダンスのスタートも、いつもいつも一緒のペアで。いつのまにか、一番仲良くなって、一番好きになってた。
高校になっても、まだ彼女はいないみたいだけど。私と同じくらいだった身長も、20センチ以上ちがくなって。
この前も告白されてたみたい。
私だって…って思うけど、現実は程遠くて。一緒に騒げるのは楽しいけど、女の子扱いされてないのはやっぱりさみしい。
「な～にため息ついてんの？」
「舞…何でもな～い。ちょっと気合い入れたの。」
「そう？」
実は。何であんなため息をついてたかって言うと、２年前のバレンタインが原因。その2月14日、鞄の中にはちっちゃなチョコが入ってたのに。朝早々に失敗しちゃった。
「はよ。今日何の日？なんか無いの？」って聞かれて。
「バレンタイン？」
「そう。日頃のお礼は？」
「なんで？あたしは義理チョコあげない主義だも～ん。3倍返しなら、あげるけど？」
「ふ～ん、まぁ、腹こわすようなもんは作るなよ」
「ひどいっ！家庭科部の実力を知らないな？」
「いや、味というか、変なもん混ざってそうだよな」
「変なもんって…普通は愛情でしょ」
「だから、腹こわすんだろ、消化不良で」
「はぁっ…」
「………」
「あれ？なんか言った？」
「いや、ほら急がねぇと」
………結局渡せないまま1日、2日、1週間―って過ぎちゃって。悔しいし、もったいないから、自分で食べちゃった。おいしく出来てたけど、その分苦しかったっけ。
もう、作らない。そう思った。
…はずなのに、今年も懲りずに、目の前には材料が並んでる。学習しないな～って思うけど、今年こそは、って気持ちもあって。また消化不良って言われそうだけど、今は、頑張ってチョコを作ろう！愛情も込めまくってやる～！
そのために、わざわざ舞のうちまで来たんだし。
「いよいよ、明日だもんね。ちゃんと渡すんだぞ♪」
やっぱり舞はお見通しだ。舞は近所にすんでて、同じ年なのに、恋愛の先輩って感じ。
舞には彼氏がいて、かずの友達の伊藤孝路君。伊藤君にとられるのがちょっとさみしいくらい、いつも一緒にいて。２年前も一緒にチョコを……食べてくれたっけ。
自分のうちでチョコを作るとお母さんに質問責めにされちゃうから、舞の家を借りてるってわけ。
「できた！」
「うんうん、いい出来じゃない。もって帰って、今日は早く寝る！寝不足はお肌の敵よ」
「そうだね、そうだね。ありがとう、明日はがんばる！」
「ちゃんといい報告するように」
「は～い」
チョコも、ラッピングもOK。鼻パックも完了。宿題…も、写し終わった(舞の)。とにかく、寝よう、寝よう、寝…よ…ぅ………