陽だまりの詩 14-1
季節はすっかり色を変え、本格的に冬が到来した。
まだ雪は降らないが、寒い日々が続いている。
俺は、小さな個室で主治医と美沙のことについて話し合っていた。
「…というわけで、今月末に彼女の手術を行います」
「……はい、お願いします」
前々から話に上がっていた美沙の手術。
ついに日にちが決定した。
勿論、それで美沙の病が完治するわけではない。
言わば悪くなる前の保険だ。
兄としては、やはりあっさりと完治してほしいが、そんな簡単な話ではないことは長年一緒にいるからわかっている。
少しずつ、そしていつか元気になってくれれば俺はそれでいい。
美沙はもう何年もこの病と戦っているのだから、今さら俺がどうこうできることではないし。
ただ美沙のバックアップは全力でするつもりだ。
美沙がいつも影で助けてくれるように、俺も美沙のためにできる限り尽力する。
だが、不安感は拭えない。
「ではまた後日、打ち合わせをしましょう」
「……先生」
個室を出て、主治医が背を向けた途端、俺は声を絞り出していた。
「…なにかな?」
「美沙は、助かりますよね?」
「…きみがそんな心配をするなんてめずらしいね」
「……美沙はどう感じているかわかりませんが…俺は恐いです」
「…きみがそんなでは彼女まで恐がってしまうよ。大丈夫だから、安心して」
「……はい」
主治医を見送りつつ、俺の両手は自然に拳をつくっていた。