「淫らな弔い」-3
「…最初は、最初は私が寝ているお布団に入って来るだけでした。でも、段々、躯を触ってきたり、一緒にお風呂に入ろうって言ってきたり…。何か変だなって思っていたけど、母のことを言われると何も言い出せなくて…」
黙って橘は話を聞いている。
「お義母さんにはこんなこと話せないし、どうしようって思ってるときに転んで入院して…。家に帰ったら、私はここに来ることに決まってました」
舞の、ぬばたまの瞳が橘を見上げる。
「先生、私の入院と義弟の手術と何か関係があるんですか?私が、ここに売られたのは何でですか?」
その黒く濡れた瞳に掛かると、何もかも話してしまいたい衝動に駆られる。
だが、橘は首を横に振った。
「舞ちゃんが、ここに売られたのは義弟さんの手術費用が足りなかったからだよ。それ以上のことが知りたかったら楼主に訊くんだね」
自分にも言えることと言えないことがある。
そして、これは舞には言えない類の話だった。
橘のその表情を見て、舞はそれ以上、訊いても無駄なことを悟った。
小さな溜息を漏らす。
橘が教えてくれないのなら楼主から答えを引き出すことははもっと難しいだろう。
「そうだ!舞ちゃん、学校行ってるんだって?制服着て見せてよ」
わざと明るい声を上げた橘の声が舞の思考を断ち切る。
「はい。ちょっと待っててくださいね」
舞自身も思いを振り切るように立ち上がる。
着替えのために部屋を出ていった舞の背中を見送ると、橘は懐から携帯電話を取り出した。
「…もしもし、あ、僕だけど。うん。聴いた。うん。詳しくは帰りにでも…。うん。じゃあ、また…。あ、そうだ!彼女の制服って予備あるの?ん?汚しても大丈夫?ダメ?あ…帰ってきた。うん。じゃあ、君、何とかしてよ。明日、一日あればクリーニングくらい出来るでしょ。じゃっ」
最後は一方的にまくし立てると橘は電話を切る。
折り返し着信音が鳴るが、橘は無情にも電源を落とす。
「失礼します」
その時、制服を身につけた舞が戻ってきた。
「へぇーっ。舞ちゃん、良く似合ってるよ」
素直に賞賛すると、舞は照れたようなはにかみを見せる。その様子がまた、可愛らしい。
「…おいで」
トコトコと近寄ってきた舞を膝の上に抱き上げると、躯のラインに手を這わす。
「あ…、下着もつけてきたんだ。ない方が良かったのに。まぁ、どのみち脱がすから一緒だけど」
囁くと、舞は耳まで赤くなる。
もう、何人もの男に抱かれているだろうに、舞のこの初々しさは形を潜めることはない。
それが、舞の魅力であり、売れる理由のひとつでもある。