特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.8-6
「もう抵抗しないのか?」
唇を離すと奥歯を噛み締める愛美の顔が青白く映った。何の思いの無いレイプ的行為に血の気が引いているようだ。
だが大河内は何も見なかったように、抵抗を無くした愛美を抱えて床に移動し、横たわる彼女の上に跨がった。
「い、いや、だ」
大きな声をあげる余裕も無い。たどたどしい声をだすのが精一杯だ。緊張で渇いた口内で舌が張り付いているのかも知れない。
「たすけ、て」
涙で目の前が霞む。こめかみを流れ落ちる涙が綺麗な線を描いた。気の強い、クラスのそして学校の代表がただの少女に戻っていた。
教師も匙を投げるような不良も、ごみ箱扱いされているいじめられっ子も、口を開けば悪口か噂話しか言わない性悪も、無関心を装う教師も生徒も。どんな嫌がらせを受けても愛美は真っ向からぶつかった。
今現在、大半に嫌われている自覚はある。疎まれてる自覚もある。
だが、自分が何かしら起こした行動によって回り続けている歯車が傾くかもしれない。綺麗事過ぎるかもしれないが、愛美はその負けん気の強さで立ち向かって来た。
嫌われてはいる。だけど解ってもらえる人もいる。それだけでいい。
だから大河内にも屈したくなかった。始めは、知らない相手では無いし、ぐっと目を閉じて流れに身を任せよう。そう、諦めに似た心境で体を開こうとした。
自分に危害を加えることはないだろう。あくまでも教師と生徒。大河内がなぜこのようなハイリスクな暴挙に出ているのか、そのほうが疑問だ。そうやって頭を切り離して愛美は考えた。
大河内に正面からぶつかって話し合おう、そう思ったのだ。
だが、怖い。
自分の体なんて二の次だったのに、いざ組み敷かれたら怖くて仕方ない。
始めから負けを認めたくはなかったのに。大河内には敵わない自分を肯定するなんて、間違っている大河内にぶつかれないじゃないか。
「………色気ねぇ。萎えた」
目を見開くと既に大河内は上にはいなかった。押さえ付けられていた体は解放され、慌ててドア側を向くと大河内が面倒臭そうに愛美を見ていた。
「解ったか?お前は何様でもねぇんだ。少しは自分を省みないと痛い目見るぜ」
「な…」
「次はねぇぜ。意外と面白そうだし、お前」
そう言って笑った。大河内が笑うのは珍しい。ただ普通に笑う姿が愛美を更に悔しくさせた。
「………だいっきらい」
「知ってる」
今の愛美の限界的な悪態に大河内は笑って返す。
「さっさとしろ。この学校にはお前と俺しかいないんだ」
5分前の事なんて何も無かったように。